笑説「ハイムのひろば」24~美術館の改装

ホームページの作成ソフトなどというものは、普段それほどお目にかかるものではない。ある意味ではオタクでもなければ一生出会うことのないものであろう。ただ、西野が思うのは、不思議なことに出会って驚きその裏側を見たときのような、言ってみれば手品の仕掛けの秘密を知ったときのような感覚がするのだ。そう、その感覚にとらわれて以来ずっとその魅力にハマってしまっている。

最近、つくる会のメンバーから美術館を改装したいと提案があった。話を聞いてみると、サイトのメニューやバナーをクリックすると多くの出品者のそれぞれの作品のページにリンクされており、一応ホームページとしての形をなしてはいる。しかし、リンク先をこまかく見ていくと、表示の仕方がバラバラで戸惑うことがあるとのことだ。確かにその通りで、それにははっきりとした理由がある。

美術館では、住民の方の中で、絵画、写真、手芸、工芸、さらに書、篆刻、ステンドグラスなど芸術的な作品を作った経験のある方にその写真を提供していただいて展示している。創設時は、一人6枚に限定してアルバムのようにベタ張りで表示した。暫くして、スタッフはスライダーと言う新しい技術を覚えたのでこれを活かし、「スライドショーで見る二次展」を開催した。スライダーだと一枚一枚を見るのにクリックの必要がなく自動的に切り替わって楽に見ることができるので、ひとりひとりの作品数も追加することにした。

30名以上の住民から多くの作品を提供していただき3年に亘って展示してきたが、一段落すると当然閲覧数が減少してきた。住民全員が日々創作に取り組んでいるというなら毎週のように新しい作品を展示して行けるだろうが、現実はそうはいかない。一方で、美術館と名付けたホームページではそれほど頻繁に更新されないことも当然である。閲覧数が目標でもないしそのまま置いておいてもまったく問題はない。

「せっかくの作品をまだ見ていない人も大勢いる。もう一度美術館を蘇らせたい。」という要望が出たのは、コアメンバーの一人である雛形雅子からであった。雛形には、創設時に出展者宅を一軒一軒廻って作品提供を呼びかけるという最も重要な役目を引き受けてもらった。西野は何とか過去の作品にスポットライトを当てることはできないものかと考えた。結果、活性化企画として3次展を開催することになったが、この時には、各個人の作品を紹介する大バナーを作成して注意を引く作戦に出た。大バナーをクリックすればその個人の多くの作品にリンクされる、これまでない新しいものだ。この企画はそこそこ好評を得てまずまずの閲覧数を獲得した。

しかし、ここでひとつの問題点が発生する。それがまさしく上記でいう閲覧時の「戸惑い」である。つまり、メニューやバナーからのリンク先が、1次展のベタ張りページ/2次展のスライダー/3次展の大バナーからのスライダーと、入口が複数できてしまっていることだ。つくった立場からするとそう思わなくても、一般の閲覧者は結局どこをクリックすればよいのかわかりにくいのは当然のことである。

見直すべきことであるのは間違いないが、その前につくる会スタッフのメンバーに西野からひとつだけ言いたいことがある。それは、「この現象は、美樹館がサイトとして成長・発展してきたことの証である」ということ。つまり、最初覚えた”ベタ張り手法”は、”アルバム” という機能を知ってできたこと。2次展のスライダーは、まさしく”スライダー” 機能を覚えてはじめてできたこと。そして3次展の ”大バナーからのリンク” は、これもナビゲーションのひとつとして利用できるということを学んだはずである。

新しい技術を覚え、一歩一歩進んで来たからこその結果がここにある。このことはまず誇りに思って欲しい。今の現象に陥るケースは二つある。ひとつは一人のデザイナーが覚えた新技術を全て使いたくなり複雑化してしまう場合。もうひとつは複数の管理者が手を入れることで統一感が薄れ、複雑になてしまう場合だ。今回はどちらでもなく、1次から2次、2次から3次に移る時、同時にこの点を解消する時間がなかったことである。

実はこの改装については、グランドデザインを担当している西野も3次展のアイデアを練っている頃に感じていた。なのでいずれはと思っていたところ、この提案がスタッフから自主的・積極的に出てきたことに感激している。ある意味、成長の証ではあっても、結果的に複雑になってしまっていることは修正すべきである。そして、この点に気づいたことも、それこそ「デザイン力」の進歩と言える。

西野は今、池田と雛形を中心に取り組んでいる美術館の改装に期待しつつ、行く末をじっくり見守りたい心境である。これが成功すれば、今後の「ハイムのひろば」の最も重要な課題である「後継者育成、技術の伝授」に一歩踏み出すことが出来ると思うからだ。

~つづく~

    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です