シンゴ旅日記ジャカルタ編(4)  巨大都市開発メイカルタの巻

メイカルタの巻 (2017年9月記)

テレビの前のみなさん、こんにちは、報道特集『火を吹く小ドラゴンたち』の時間です。

この番組では活気あふれるアジアの国々の発展の模様を個別のプロジェクトを通して検証して行こうとする番組です。

第一回目の中国のレンタル自転車市場、二回目のシンガポールの観光事情に続き、今回はインドネシアから大型都市開発をお伝えします。

中国は日本を抜いてGDPで世界第二位の国となり、援助される国から援助する国へと大きく変貌しました。また、シンガポールは何も資源のない島国から、今では一人当たりのGDPが日本を追い抜きました。

かつて発展途上国といわれていたアジアの国々が日本を追い越し、あるいは間もなく追いつこうとしているその裏側には、その国々に合った政府の対策、民間の努力があると思います。

インドネシアもかつては石油、ガスの輸出により貿易が成り立っていましたが、現在ではそのころとは様変わりです。今ではOPECのメンバーではなく、石油ガス以外の輸出により貿易黒字を計上するまでになりました。

今回は首都ジャカルタから離れたチカランという町で建設中の巨大都市に焦点を当ててみました。

かつてアジアの国ぐには日本を先頭にして発展していく雁行経済と呼ばれたことがあります。

しかし、今では失われた20年の日本よりも、世界の大国となった中国がアジアの国々に大きな影響を与えています。それで、この番組では一帯一路という名目で経済圏構想を打ち出した中国を竜の親と見立て、アジアの国々をその影響を受けている小さな竜に見立たてて実情を報告していくものです。

では早速現地からの報告をごらんください。

MG5テレビのジャカルタ支局の草刈正雄です。

私は今、建設用クレーンが数多く立ち並んでいる工事現場に来ています。

ここはジャカルタから高速道路に乗って東に40kmほど走ったチカランという田舎です。

このあたりには日本の商社が中心になり開発したいくつかの工業団地があり、インドネシア産業に大きなウエートを占めている地域なのです。それらの工業団地にはトヨタ自動車をはじめとする日本、韓国、そして欧米の自動車メーカー、その下請け、そのほか電気、電子、機械、食品そして化粧品で有名なマンダム社などあらゆる企業が進出してきています。(あっ、いけないスポンサーは資生堂だった。)

工業団地で働く人たちは現地の人も、駐在員の方も一部はブカシやチカランに住んでおられますが、まだジャカルタから朝晩の混雑にも負けず二時間、三時間と時間をかけて通勤されています。

そんな中、ブカシ近辺の将来の発展、人口の増加を見越して巨大都市を目指して建設が始まったプロジェクトがあります。その巨大都市名はメイカルタといいます。

メイカルタはインドネシアで第7位の華人財閥であるリッポー・グループが開発主体です。

リッポー・グループは1929年にマランで生まれた華人のモフタル・リアディ氏が1948年にリッポーバンクを設立したのが始まりです。そして同氏はブアナバンク、パニンバンクで銀行家として名を上げていきました。1975年に当時インドネシアで最大の華人財閥であったサリム・グループ総帥のスドノ・サリム氏の誘いでバンク・セントラル・アジア、通称BCAの共同経営者となりました。

モフタル氏は1990年の円満退社まで頭取として腕をふるい、BCAをインドネシア最大の民間銀行に育て上げました。しかし、リッポーバンクは2009年のアジア通貨危機のあと他の銀行に合併されました。しかし、モフタル氏の息子世代がビジネスを引きついて事業を拡大させていきました。

長男のアンドリュー氏はシンガポールや香港で不動産事業を成長させ、次男のジェームス氏がグループの社長としてインドネシアを担当し、不動産事業を中心として、メディア、通信、小売、医療、教育など多くの事業に参入しています。

また、インドネシア最大の小売り店であるマタハリ・モールはリッポーが展開しています。

そのリッポーは1990年にチカランに最初の工業団地リッポーチカランを完成させ、1994年にはジャカルタの西のバンテン州タンゲランのカラワチに、さらに南スラウェシ、ボゴールなどへと開発の足をのばしまして行きました。2007年には韓国に進出、さらに香港にもリッポーセンターという超高層ビルを所有しています。

そしてチカランでは工業団地ばかりでなく、牧場、ホテル、娯楽、ショッピング。モールなど様々な事業を展開しています。そしてついに二年前の2015年に、ここチカランに東南アジア最大で、かつ美しい、理想の都市の実現を目指してメイカルタを建設することを発表したのです。

なお、メイカルタのメイは創始者のモルタル氏の奥様の名前から名付けられたと聞いて言います。

このメイカルタの工事現場は私が赴任してきた昨年の11月は、まだのどかな田圃風景で、水田が広がり、なだらかな斜面では牛たちが草を食べていたところでした。

それが今年の5月ころからタンクローリーにコンクリートを積む設備が急にでき上がり、一般道路路の両側にメイカルタの完成図の写真を大きく張り付けた派手な塀に囲まれていきました。

そしてこの工事現場にはMという文字の入った大きなバルーンが所狭しと無数に上がっているのです。今回、私はその工事現場に入ることができました、できましたというより、工事中にも拘わらず、一部完成した場所には一般の人も自由に出入りすることができるのです。

リッポーグループが今年5月に発表したこの巨大都市の構想は次のとおりです。

今から20年以内にブカシ、カラワンなどジャカルタの東部首都圏の人口が2千万人規模となる。そうなると過密都市ジャカルタでは渋滞、住居不足に陥るのでその解決策としてチカランに最終的には投資総額278兆ルピア、約2.3兆円の大規模なニュータウンを建設する。その第一段階として3年の計画で200万人が住むための40万戸の住居の建築を始める。さらに長期的には40兆ルピア、約3.3千億円を投資して国際空港を、23兆ルピア、約2千億円d絵モノレールを建設するとしています。この8月末現在でまだ建設中の住宅が13万戸予約済となったとの発表がありました。

この巨大都市の面積は最終的に5、000Ha、東京ドーム約1000個分ともいわれますが、現場の事務所で確認したところ、三菱商事が当初計画していたオレンジ・カウンティという商業施設とその周辺の土地500Haが第一期の開発面積のようです。

それにしても工事現場の広さと建設機器の多さには圧倒されます。

私は今、番組の冒頭で紹介した現場から車で10分ほど離れた小高い丘の上に登ってきました。

ここから眺めると、辺り一体にすべてMの文字の入ったバルーンが浮き上がり、まるでおとぎの国のキノコにかこまれているような錯覚におちいります。

そして、ここでも工事現場には数多くの建設クレーンが立ち並び、忙しくタンクローリーが行きかい、作業者が立ち働き、工事現場を囲った塀にある数か所の入り口では守衛さんローリーが早く出入りできるように一般道路の車の通行の整理をしています。

このメイカルタには商業、住宅、文教地区だけでなく、東京ドームの約40倍もの広さをもつ広大な公園がつくられる予定で、その予定地にはすでに大きな池が出来上がっているのです。

では、その公園に行ってみましょう。はい、ここがその大きな池のある広い公園です。

この池の周りには、ごらんのようにすでに大きな木々やきれいな草花が植えられて、一般の人々が散策を楽しんでいます。とても日本の建設現場では考えられない風景です。

この公園には休日には朝から家族連れの人々散歩を楽しみ、平日の夕方には池の回りのベンチで夕涼みをしたりしている風景が見られます。また、そんな人々を当て込んで、食べものを売る車も来ています。

私が工事現場を取材中していた時に、東南アジア各国に長く駐在したことがあるという年配の日本人の方に出合いました。その人の話では、このような大規模な工事現場はかつて見たことがない、あえていうならば1970年代のシンガポールのジュロンの工業団地の建設現場を思い出す程度であるとのことでした。

ここでの工事は昼間ばかりでなく夜を通して行われています。私は夜の工事現場にも行ってみました。そこでは暗い空に建設クレーンのアームにいくつかの灯りが点き美しい光景を写しだしていました。日本ではかつて工場夜景クルーズとい工業地帯の工場エリアの夜景を船上から見学するツアーがありましたが、メイカルタの夜景もそれに勝るとも劣らないくらいの迫力があります。

私にはまるで夜の造船所かコンテナヤードのような風景にみえました。中には灯りが点いたまま動いているクレーンや、土を運ぶトラックが出入りしているところもありました。

また、昼間に訪れたた公園に行ってみると、そこにはベンチに座っているカップルたちがいました。

驚きました。インドネシアのある地域では夜9時を過ぎて歩いている男女は結婚しなければならないといった規則があると聞いています。ここチカランにはその規則が適用されているのでしょうか。

それでは最後になりましたが、リッポーが発表しているメイカルタの完成予想図をご紹介します。

(取材の合間に)私は空高く浮かぶバルーン見ていて、一体どれくらいの力で浮いているのか知りたく思い、バルーンに近づき固定している紐を引っ張ってみました。かなりの力で浮いています。数個をまとめれば私が宙に浮いてしまうような感じでした。取材のため使用した車の運転手も、公園内の写真を撮ったり私と風船で戯れたりしました。


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