シンゴ旅日記ジャカルタ編(3)  インドネシアのお墓の巻

インドネシアのお墓の巻 (2017年8月記)

ジャカルタから高速道路で東に向かうと日系商社各社が開発した工業団地群があります。

その中の一つの工業団地に隣接して大きな霊園が二つあります。

一つは中国人とキリスト教徒の霊園、もう一つはキリスト教徒とイスラム教徒の霊園です。

そして工業団地からは霊園の側に抜けるゲートがあり、いつもは閉まっているのですが、午後4時からはラッシュアワーを緩和するために解放されています。

  • ポチョン

ある日、工業団地のお客様を訪問した後で、墓地に抜けるゲートを通って帰ろうとすると、そこには私設の通行税徴収者がお金を入れる缶を持ち、その側には白い布に身を包んだ人が立っていました。

私は運転手に聞きました。

私       : あの白い布を被った人は何ですか。

運転手 : ポチョンです。

私       : ポチョン?

運転手 : イスラム教では人が亡くなると、服を脱がされ、白い布で体をくるむのです。

頭の上の布を紐で結び、体と足は紐で縛ります。

私       : どうして裸なの?

運転手 : 人は生まれた時も裸で、死ぬ時も裸だからです。

私        : イスラム教もキリスト教と同じで、死んでもいつか神様が助けに来るんだよね、

運転手 : そうです。

私       : その時に、裸ではカッコ悪いんじゃないの。神様が服や靴を買ってくれるの?

運転手  : .....

その時はそんな会話をしただけでしたが、私はそれらの霊園に行って見たくなりました。

ある土曜日にその工業団地での客先との打合せが午前中で終わったので、私は運転手にこの前見た霊園の横を通ろうといいました。すると、運転手は霊園の中に入れますよというのです。それで霊園をゆっくりと見学することにしました。まずは中国人とキリスト教徒の霊園です。

私       : 昔の中国の葬式ではお金をお墓に埋めたりしたんだよ。

運転手 : そうです、だから昔は中国人のお墓がお金目当てで荒らされたことがあります。

イスラム教では死人は頭を北に、足を南に向けて置く姿勢をとります。

そして、右の頬を地面に付けるのです。

私        : 頬を地面って、棺桶に入れるんじゃないの?

運転手 : イスラムでは棺桶はありません。

私        : 頭が北で右頬を地面に付けるってことは、西を向くってことだね。

それはメッカの方角だからなの?

運転手  : そうです。イスラム教の中心はメッカなのです。

私        : じゃあ、メッカの西にあるアフリカの人は左頬を地面に付けることになるね。

運転手 : (自身なさげに)そうです。

私        : じゃあ、ロシアのイスラム教徒はどうするの?頭は西の方角それとも東の方角?

運転手 :....

私たちは車を降りて広場のような墓地を歩きました。私はスマホを取り出してコンパスのアプリで方角を確認すると、確かにイスラム教のお墓は長手方向が南北になっていました。

私        : あれっ、この人は1985年に亡くなったと書いてあるよ。

でも、その頃に、ここの墓地はなかったんじゃない。

運転手  : 昔は人が死ぬと家の近くに埋めました。引っ越しするときはそこを掘り起こして土を持っ て新しい土地に行って埋めました。きっと、これもそうしたのでしょう。

私        :でも、死んだ人を棺桶に入れないで土に埋めると、息苦しいよね。

運転手 :(私の冗談を無視して)イスラム教はそのまま土をかぶせますから、お墓が低いのです。

私        : ヘェー、

運転手 : 見てください、イスラム教のお墓が同じ向きに並んでいるでしょう。

あちらのキリスト教のお墓は向きがバラバラです。

私        : なるほと。

運転手 : あっ、この人は大金持ちのひとです。

私        : なぜわかるの。

運転手 : この人の家族の名前が有名なお金持ちの一族だからです。

私は彼からこのほかにイスラム教では亡くなると一週間は家族がみそぎをすること、40日間はお祈りしたりすること、イスラム教でも死ねばそれきりと言った宗派があることを聞いたりしました。

また、お墓に花を蒔いてその花が萎れるまではなんとかであると聞いたのですが、忘れました。

2.中国式のお墓

華僑のお墓は中国式とキリスト教式の二種類があります。中国式の墓碑は中国語だけでなく、英語、インドネシア語で書いてあったり、ミックスして書いてあるものがあります。

どの墓石にも漢字で「金玉満堂」の表現がありました。

その意味が分からなかったのでアパートに帰ってから調べると「きんぎょくまんどう」と読み、「財産が蔵にたくさん集まるように」という願い事でした。

ちなみに、中国人のお店でよく見る逆さの「福」の字は、中国語で「福倒了」(福が逆さ)と言い、その発音が「福到了」(福来たる)と同じとなり、これまた「福が来ますように」というシャレになっているそうです。

他にも「母徳如山重」、「親恩以海深」、「子孫前世澤」「孫可継家聲」とか感謝の言葉や願い事がたくさん書いてありました。

また、日本のお墓でも夫婦が同じ墓石に名前を入れる場合、亡くなっていない方は朱色としますが、それと同じものもありました。

華僑のキリスト教式墓地では、聖書の一説が漢字とインドネシア語書いてある石碑が多くありました。イスラム教の墓石は生年月日と没年月日そして出身地と亡くなった土地だけでしたが、華僑の墓石にはそのほかに子や、孫、外孫まで掘ってあるものもありました。

余談: 寝仏

お釈迦様が涅槃に入る時の姿を仏像にしたものが寝仏像です。

その眠る姿勢は右胸を下にするでしょうか、左胸を下にするのでしょうか?

私の知っているタイの寝仏はほとんどが右胸を下にしていました。

ですから、お釈迦様は心臓が悪かったので左胸を上にして、血液を体に回りやすくしているのだと私は皆に冗談で説明していました。

丹羽慎吾

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