燕~詩集「流体」より

  燕

浮いたとたん
狂ったような速さ
激しく沈み
急に向きを変える

ああっ
ぶつかってくる
思わず目をつむる人の
頭上すれすれに
数羽
やみくもに飛ぶ

曲がり角
きれいに反れ
生け垣の
繋がった枝葉より低く
二羽
ぐんと去る

歩いていた人は
置き去りにされる
足元にくぐもった地熱を
急に感じる
今は六月のただなかと知る

霧雨が降り

激しく揺れ

空中で何かを

産み継ぐことに
これほどにも憑かれ

速く
とても低く翔ぶ

荻悦子(おぎ・えつこ)
1948年、新宮市熊野川町生まれ。東京女子大学文理学部史学科卒業。お茶の水女子大学大学院人文科学研究科修士課程修了。作品集に『時の娘』(七月堂/1983年)、『前夜祭』(林道舎/1986年)、『迷彩』(花神社/1990年)、『流体』(思潮社/1997年)、『影と水音』(思潮社/2012年)、横浜詩人会賞選考委員(2012年、16年)、現在、日本現代詩人会、日本詩人クラブ、横浜詩人会会員。三田文学会会員。神奈川県在住。

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