がんを考える13~健康診断の大切さ
私は、現役時代の仕事は結構多忙でかなり体に無理をしてきた時期もありましたが、幸いにもこの歳になるまで比較的健康であったと思います。もちろん多少の病気は人並にしてきましたが、入院や手術が必要になるような重大な病気には縁がありませんでした。会社で用意された年に1度の人間ドックでも大きな問題はなく定年を迎えました。
退職後は、国民健康保険の健康診断を年に1度受けており、さしたる問題もありませんでしたが、現役の頃と比べて検診の検査項目がかなり少ないことは気になっていました。「胸部エックス線検査」「大腸がん検診」「胃部エックス線検査」「内蔵エコー検査」「眼底検査」「聴力検査」などは有料で追加で受診できますが、基本的には含まれていません。私は、不養生で特別に検査を追加することはしていませんでした。
しかし、このところ我が家に吹き荒れたがんの嵐を経験して、日頃の健康診断がいかに大切かということを思い知らされました。まず、昨年、弟ががんの手術を受けましたが、幸い早期発見で2週間たらずの入院、手術でことなきを得ました。健康診断の血液検査の結果が思わしくなく、さらに受けた精密検査の結果、がんが見つかりました。
次に、今年2月、こんどは93歳になる母親にがんが見つかり、嫌がるのを説得して手術を受けさせた結果は順調で、お蔭さまで今は元気にしています。年齢とともにあちこちが弱ってきて、心臓やら、糖尿やら、いろいろなことで病院通いが多かったために見つかったのでした。
同居はしていませんが、身内の二人が相次いでがんと診断され、やれやれと思っていたところへ、今度は私の妻が腎臓がんを発症していることがわかりました。これも、健康診断の尿検査で血尿とたんぱくの値が大きかったため、エコー検査を受けることをすすめられ、その検査で3~4㎝の腫瘍が見つかったのでした。
そして、最後は自分自身。私の場合は、特殊ケースかもしれません。先生によると、膀胱にこれほどの大きさ(直径4.2㎝)の腫瘍ができていれば、血尿の一度や二度は目視でわかるのが普通。ほとんどのケースで、自分で血尿に気が付いて病院に来ると言われました。健康を過信していたために見落としたのだと思います。
後になって、3~4年前まで遡って健康診断結果を見ると、血尿や淡白の数字が少しずつ上がってきているのが見てとれました。ただ、数字が緊急を要すると思われる限界までには達していなかったので、先生から再検査の指示が強くは出なかったのです。自分が慎重に結果を判断して行動していれば、また、健康診断をしてくれた先生が慎重な判断をしてくれていたら、もっと初期の段階で発見できていたはずでした。
こうしてみると、たかが健康診断ではなく、されど健康診断です。血液検査や尿検査だけでもいろいろな病気の兆候を知ることができます。健康診断だけでどんな病気でも発見できる訳ではありませんが、多くの病気を発見できることは事実です。若いときは、仕事の関係などでなかなか時間が取れないことが多いものです。しかし、この年になると時間だけはたっぷりあります。みなさん、最低でも一年に一度、健康診断を受けるようにしましょう。
大きな病気、特にがんを治療するためには、早期発見が大切です。がんは今や、特殊な病気ではありません。一生の間に、二人に一人はかかるといわれる普通の病気です。しかし、発見が遅くなるほどそれだけ打てる手が少なくなります。小さな兆候を見逃さないことこそが健康を保つためのこつといえるでしょう。
~つづく~
蓬城 新