がんを考える1~妻へのがん告知

はじめに
5月末、長年の友人Oさんが池江璃花子さんと同じ急性リンパ性白血病との診断を受け入院したと連絡が入りました。Oさんは、40年以上前の20代の頃に机を並べて仕事をした同僚の一人です。長い間連絡が途絶えていた彼と何十年ぶりにメールを交換したのはつい先日のことでした。お互いの元気を確認し合ったばかりだったので急な入院には本当に驚きました。何か一言メールでと思い、何度も書き直しましたが彼に送るべき適当な言葉が見つかりませんでした。

がん患者にはどんなありがたいお見舞いの言葉も虚ろに聞こえるものです。代わりに4年前に書いた我が家のがん闘病記を読んでもらうことにしました。いざ自分が、がん宣告されてみると、まず頭が真っ白になった後、他の人はどんなことを考えるのだろうと思いを馳せます。自分で書いたものを少し読み返してみると、相も変わらぬ駄文の中に正直な気持ちが見て取れました。そこで、友人の勧めもあって、恥ずかしながらここに公開することにしました。

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妻へのガン告知
4月(2016年)下旬のことでした。妻が腎臓がんに罹患したことがわかり大きなショックを受けました。子どもたちと家族会議を開き、どのようにして妻の健康を回復するかを話し合った末、まずは、信頼できる病院を選択することが重要と考え、お互いの友人、知人に連絡をとって出来る限りの情報を集めることにしました。

私は、以前、友人のKさんががんに罹患して大変なご苦労をされたということを聞いていたので、さっそく連絡を取ってみることにしました。Kさんは、もともと医薬業界に従事されていたこともあってその方面の事情に詳しいこと、そしてなにより、ご自身が通常の手術より何倍も難しい手術を受けて困難を克服されたという経験の持ち主でしたので、藁にもすがる思いでいろいろとお聞きしました。

一方、子どもたちもそれぞれ会社の上司や同僚、友人たちにいろいろ聞いて情報を集めました。そんな中、娘の一人が学生時代の友人からひとつの病院を紹介されました。そしてその病院は、偶然にもkさんが他の病院ではできないといわれた難手術を受けて完治されたという、まさにその病院だったのです。

親子それぞれが別の友人から情報を集めいくつかの病院が候補にあがりましたが、その中で唯一、一致した病院があり、しかもそれぞれに聞いた情報が納得できるものだったので、一も二もなくその病院に決めました。さっそく予約のための電話を入れて相談した結果、受け入れてくれることになり、今かかっている病院ですぐに紹介状を書いてもらうように言われました。

早速、紹介状の発行をお願いすると、通常2~3週間はかかるといわれているところを、幸運にも翌日いただけることになりました。そのことを報告すると、1週間後に初診の予約を取ってくれ、とんとん拍子に話が進みました。最初の病院で撮ったCT写真と紹介状を持って、約束の日にその病院に向かうことになりました。

家族で初めてのがん告知だったのと、片方の腎臓を全摘出しなければならないと言われたことで、本人はもちろん家族全員のショックは大きいものがありました。しかし、その後の治療への準備がすべて順調に進んだので、不安は残るものの一筋の光が見えたような気がして、少しだけ気持ちが前向きになりました。入院の日程も決まり、あとは手術の成功を祈るばかりでしたが、その時は妻の心の奥まで覗くことはできていませんでした。

~つづく~

蓬城 新

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