「上品な紳士がつかつかと楽屋に来られ、誰だろう、見たことがある人だが、と思っているうちに、以前からの知己という感じで近寄ってこられた。その言葉の中にこもっている気持ちの細やかさ、それに握手したときの、こちらの手を包んでしまうような大きさと、柔らかく温かい感じが本当に印象的だった。

あとで、佐々木真さん(京大理学部物理学科出身:東京交響楽団のフルート奏者)にそっと訊くと、

『あれが、中川牧三先生ですよ』と教えてもらい、年齢を知って、あっと驚いた。

ダンディですっきりとしたさわやかさをもつ、あの人が100歳近いのか!というわけである。」

河合隼雄氏(京大理学部数学科出身・京大名誉教授・臨床心理学者・元文化庁長官・フルート奏者)が中川先生とはじめてお会いになった時の印象をこのように記述されている(『101歳の人生をきく』中川牧三:河合隼雄、共著、講談社)。

「~親しくおつきあいをさせていただく間に、先生ご自身や周囲の人たちから聞く話の内容は驚くべきことばかり。

佐々木さんが『いま朝比奈隆先生(まだ、ご存命中だった)を、朝比奈君なんて呼べるのは、中川先生くらいですよ』といわれたが、なにしろ朝比奈先生を戦争中に、上海交響楽団の指揮者に呼んだのが中川先生なのだから、これも当然のことである。~」

長々と河合隼雄氏のお言葉をお借りしたのには理由がある。

私が中川先生の偉大な特徴(天才性?)として注目していることに、先生の驚くべき人脈がある。

世界的な音楽家なのだから日本や海外の著名な演奏家や音楽大学教授(学長を含む)とお親しいのはまだ理解出来るが、外交官・外務省関係者・医学関係者・マスコミ関係者・経済界の重鎮・・・

このように私が知りえただけを考えても、“私はいったいどういう方に師事しているのか”と恐れることすら超越してしまった無感覚さで、当時は先生との雑談を楽しんでいた。

そして、先生とお親しい海外の著名な演奏家やマエストロ(マリオ・デル・モナコ、ジュリエッタ・シミオナート、マエストロ・ファバレット、マエストロ・カサグランデ・・・)に、海外だけでなく日本でも次から次へと教えを受けさせて頂き、先生方の名前も記憶できないほど多くの方々から音楽の知識と音楽的感性のご指導を受けさせて頂いた。

それなら音楽以外のお知り合いは?・・・(次号へ続く)

杉本知瑛子

大阪芸術大学演奏科(声楽)、慶應義塾大学文学部美学(音楽)卒業。中川牧三(日本イタリア協会会長、関西日本イタリア音楽協会会長))、森敏孝(東京二期会所属テノール歌手、武蔵野音大勤務)、五十嵐喜芳(大芸大教授:イタリアオペラ担当)、大橋国一(大芸大教授:ドイツリート担当)に師事。また著名な海外音楽家のレッスンを受ける。NHK(FM)放送「夕べのリサイタル」、「マリオ・デル・モナコ追悼演奏会」、他多くのコンサートに出演。

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