農家の十男で末っ子の新米記者は24歳で結婚した。相手は周囲の独身仲間たち憧れの的の女性(22)だった!恋愛でもお見合いでもない。イケメンどころかルックス十人並みでないボクが高嶺の花と結婚できたのは……。

古里の父親とある日、電話をしていた時
「お前、結婚したいような人(女性)おるんか(いるのか)?」と突然質問してきた。

「そんな人いないよ。ただちょっと好きだなぁ、という人はいるけど、結婚まではとてもとても」とボク。人気の的のマドンナを想像して言っただけだった。

数日後、父はボクの中学時代の恩師と共に田舎から突然訪ねて来た。驚くことに結納の調度品一式持参している。恩師はどうやら仲人役のようだ。

「お前が好きという人が一番じゃ。さあ顔合わせに行こう」と父。「急にそんなの困る。相手に迷惑」と思ったが、バスと電車を乗り継ぎ、遠路はるばる来たのにムゲに言う勇気はない。マドンナに経緯を話すと彼女はしぶしぶ実家に連絡した。

それまで彼女と恋沙汰話もちろんない。しかしボクは不思議なことに肩の力が抜けて、気楽に話はしてきた。きっとフーテンの寅さん流に言えば「やけのヤンパチ 日焼けのナスビ…わたしゃ入れ歯で歯が立たないよ」感覚で歯が立たない、と思うと自然流で話ができたのかもしれない。寅次郎とマドンナ吉永「歌子さん」の関係のよう。

さて彼女の家。両親は突然の客に結婚の承諾どころか、どう対応していいものか思案投げ首状態だ(当然です)。しばらくして彼女の祖父・長老がゆるりと登場して「これもご縁じゃ、結婚させたらどうか」とひと声。ボクの父も仲人先生も彼女の両親含め一同びっくり。それで話が進んだ。両家お互い農業というのも話のタネにはなった。彼女もまさかこんな形でこんな人と婚約するとは夢にも思わなかっただろう。一番驚いたのはボクだった。

退職する彼女の女友達らが「ねぇ、どうしてあんな吉原さんなんかと結婚するの?」と次々聞いてきたそうだ。「あんな」とか「なんか」の吉原 正直へこみました。でも自分だって彼女にそう質問したかもしれない。

月下氷人は父親だが、ボクの兄たちも24歳前後で結婚させている。多分、末っ子を早く片付けて安心しようとの一心だったのかもしれない。

ボクは本州島根、彼女は九州福岡生まれ。本州と九州を結ぶ大動脈・関門橋が開通した昭和48年、結婚式を挙げた。

(吉原和文)

 

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