オランダ点描(23)チーズ

昔はチーズ嫌いの方でも、オランダ(必ずしもオランダだけに限りませんが)に来てチーズをいろいろ食べてみて、チーズとはこんなに美味しいものだったのかと思わずうなってしまった方が意外に多かったのではないでしょうか。ヨーロッパ各国それぞれの特徴のあるチーズがありますが、フランスなどのソフトタイプよりも、オランダはどちらかというと固めのハードチーズ・セミハードチーズが主流です。私も、それまでは日本の乳業メーカーが作っているいわゆるプロセスチーズというものしか馴染みがなかったせいか、あまり美味しいとは感じていませんでした。しかし、オランダをはじめヨーロッパでは普通のスーパーで売っているナチュラルチーズはたとえ安いものでも美味しいものが多いのです。
チーズの歴史の差は致し方ありませんが、あまり美味しくなくチーズらしくないもの(?)をチーズという名前で覚えこんでいたとしたら、それはチーズに失礼というものかもしれません。奈良時代、日本でも醍醐というチーズに近いものがあったと文献にはありますが、その後は一般的な食品としては継承されず、醍醐味とかの言葉として残っているだけです。とても残念に思います。醍醐とは一体どんな味だったのか?

チーズの味はなぜそんなに違うのか?食べ物のことですから、当然人それぞれで嗜好が異なるし、味、香り等はなかなか言葉で表現できませんので困るのですが、一言でいって、食べ比べればすぐに分かるということです。食べ比べない限り、第三者が言葉でいくら説明しても無理というもの。同じ食文化の中にいるはずの日本人同士でも、納豆・くさや・鮒ずしといった発酵食品については意見を異にします。腐敗臭がするといって嫌がる方がおられるかと思うと、この発酵が進んだところが栄養的にも優れているしオツな味覚だと賞賛される方がおられます。
日本では歴史的にも動物性の食品よりも植物性の食品の方が一般的であったがゆえに、みそ・醤油などの発酵臭には何の抵抗がなくてもチーズとなると途端にしり込みするということになるのかもしれません。タンパク質の発酵である以上植物性であれ動物性であれ、それほどの差はないはずなのに、習慣とは恐ろしいものです。

ついでに、スイスで有名なチーズフォンデュですが、専門に食べさせるところへ行くと店の中はすごく臭い。ドアを開けただけで、その臭さにガツンとやられた感じがします。でも、人間の鼻は臭さにも意外と早く慣れるもので、しばらくするとあまり気にならなくなります。そればかりか、そのうえで鼻をよく働かせるとその臭さの中に、本来のチーズの香りがするし、またなぜか、くさやを焼いた時の匂いに通ずるようなにおいもするのがわかります。それはともに共通する腐敗臭に近いアミン臭でしょう。タンパク質が分解して(発酵か腐敗か)いろんなアミノ酸に変化することで独特の匂いと一緒においしさが味わえるということです。でも、やはりどうしても嫌なものは嫌か?

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