シンゴ旅日記インド編(その48)言葉遊び・神様の巻

江戸時代から伝わる言葉遊びから日本の仏様、神様を見てみます。

『恐れ入谷の鬼子母神、そうで有馬の水天宮』
鬼子母神の元はインドのハーリーティと言う女性神です。音読みし訶梨帝母(かりていも)とも呼ばれます。最初は人や馬の肉を食べるという女の鬼(夜叉)でした。
ある町でこの鬼に子供が食べられるという事件が続き人々が釈迦に惨状を訴えました。
その鬼には子供が500人とも1000人とも居ました。釈迦はその鬼が一番可愛がっている末っ子を托鉢の鉢の中に隠してしまいました。すると鬼は7日7晩捜しあぐねて釈迦に助けを求めにやって来ました。そこで釈迦は『お前は子供を一人でも失って悲しいのであるから人々の悲痛さが分かるだろう』といって隠していた子供を返してあげました。その後この鬼は仏教に帰依し安産と育児の守護神である鬼子母神になったのです。
鬼子母神像はシンボルとして豊饒を表す柘榴を持っています。
奈良時代に伝えられたこの神さまは平安時代に貴族の間に子供の守護神として信仰され、
鎌倉時代には法華経の守護女神として日蓮宗の中で大きく広まって行きました。
水天宮はご存知水と子供を守る神様です。水難除け、農業、漁業、海運、水商売で信仰されています。犬が出産を簡単に行うので戌の日にお参りしたり、妊娠五ヶ月目の戌の日に腹帯を巻くのです。江戸にはその水天宮が有馬藩邸の中にあったのです。総本社は福岡県久留米市です。水天は神仏習合で日本のアメノミマクリノカミ、クニノミマクリノカミと同一視されました。
この日本の神は子供と関係が無かったのですがミマクリが『みこもり』(御子守)に通じ子育ての神様となりました。
日本の神様ってここでも語呂合わせ、シャレで祀られるのですね。水天は梵天、帝釈天と同じく仏教に帰依したインドの神様で、十二天の一人で西方の守り神です。
イランのゾロアスター教では水天はアフラマズダという最高神です。
ゾロアスター教は古代ではアーリア人の宗教でしたそして現代のインドではパールシ(ペルシャ)教として信仰されています。その教徒にはインド財閥の一つのTATA一族がいます。

『堪忍信濃の善光寺』
『牛に引かれて~』の善光寺は長野にある無宗派の寺院です。
天台宗と浄土宗により運営されています。
このお寺にあの朝鮮の聖明王から538年に欽明天皇が頂戴した仏像(一光三尊阿弥陀如来像)が祀ってあると言うのです。この仏像は欽明天皇が蘇我稲目に預けていたのですが、その後、都に災いがおこり廃仏派の物部氏により川に捨てられていたのを信濃国司の従者の本田善光と言う人が拾って長野に持って来たという由来があるのです。
戦国時代末期には信長が岐阜へ、秀吉が京都へ、家康が尾張へ持って行き1598年にまた長野に戻って来たといわれています。
この仏像は絶対秘仏で住職も見ることができません。そのレプリカとして前立本尊金銅阿弥陀如来像があり、7年に一回ご開帳されます(次回は2016年です。)

『伊勢屋稲荷に犬の糞』
江戸の町に沢山あったものの例えです。頭に『火事 喧嘩』が付くこともあります。
『伊勢屋』とは大阪商人、近江商人と並ぶ伊勢出身の商人のことです。
伊勢商人は戦国時代から木綿を主体に全国に販売して財を築きました。
そして、家康の江戸開府とともに江戸の町にやって来ました。
伊勢商人では三井家が1673年に創業した呉服屋越後屋が有名です。
なぜ、伊勢商人が越後を名乗るのか?
それはこの三井家が代々越後守を名乗る武家だったのです。
江戸幕府のご用達となり、今では映画、ドラマで『越後屋、お主も、なかなか、、、』と言われ悪徳商人の代名詞のように使われます。
この越後屋は明治に入り呉服店では儲からなくなり、他のグループ会社(銀行、物産、鉱山)に大きく差をつけられ三井の事業から切り離されました。
1904年から百貨店として営業し、1928年に社名を三井呉服店から『三越』としました。
同じく伊勢と名の付く『伊勢丹』は米穀問屋『伊勢又』に養子に入った小菅丹治が命名した『伊勢屋丹治呉服店』(1886年創業)が省略して呼ばれるようになったものです。
その伊勢発祥の大手百貨店2社が平成になって合併するのは何か歴史を感じますね。
『稲荷』は伏見稲荷の祠のことです。元々渡来人の秦氏の氏神です。
農業神、食物神だったものが商売繁盛殖産興業に結びついて行き屋敷神ともなりました。
江戸には武家屋敷にも稲荷神の祠があったそうです。
稲荷はインドの人食い女神ダキニ天と神仏習合しました。
住友商事が製作協力した映画『憑神(つきがみ)』(2006年)も稲荷神絡みです。幕末の武家の次男坊がフリーター状態の時に開運を稲荷に祈ったところ、間違えて貧乏神、疫病神、死神に取り付かれてしまう話です。『鉄道員(ぽっぽや)』『蒼穹の昴』の浅田次郎の原作です。
伊勢屋の旦那が出てきます。でもそれは死神でした。西田敏行が好演していました。
『犬の○○』は説明省略します。綱吉の生類憐れみの令も関係してくるのでしょうね。きっと。

『焼餅や こがしゃかとなる 摩耶夫人』
これは、焼餅を『焦がしたら硬くなる』と『子が釈迦となる』をかけた言葉遊びです。
『摩耶さん』はお釈迦さんのお母さんです。

『七福神』余談
七福神の出身国はインド(大黒(シヴァ)、毘沙門、弁才天)、中国(福禄寿、寿老人、布袋)、日本(恵比寿、大黒)です。アジア三大国・神様連合ですよね。
中国には八仙人信仰があります。ジャッキー・チェンの『酔拳』と言う映画は『酔八仙拳』が基です。八仙人のお酒の飲み方、酔い方を表し映画化したものです。
また孫悟空と言えば日本では『西遊記』が有名ですが、これには東西南北の『四遊記』からなる物語なのです。八仙人は『東遊記』で孫悟空と一緒に竜王と闘ったりします。

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