フランスあれこれ(14)7月14日はパリ祭

7月14日はパリ祭です。今までにもテレビなどでご覧になったと思います。朝からシャンデリゼ大通りで盛大な軍事パレードがあり、大統領の閲兵のもと、パレードには陸海空軍は無論、戦車、騎兵隊、更には消防団や看護師などが登場、そして最後を飾るのは退役軍人や外人部隊です。そのさなか空軍の三色旗煙幕が轟音とともに上空を通過します。即ち国を守る集団全てが参加します。午後はエッフェル塔の麓での大音楽祭、更に夜はセーヌ川での花火大会と終日お祭り騒ぎです。

フランス国民にとってパリ祭は特別のもので、この日ばかりはフランス国民の心が一つになります。年中行事となっているストなどすべてを忘れて国を支える人たちへの共感を覚える一日なのです。翌日は一転してバカンスの始まり、南に向かう主要幹線道路に車が溢れ終日渋滞となります。パリ祭を見て、これでひと安心と言うことでしょうか。

ところで皆さん、ご存知ですか?パレードの先頭集団が学生だ!という事を。一見海軍将校集団にも見えるのですがこれがエコール・ポリテクニック(通称ポリテク)と言う最高学府の一つです。しかも理工学部だけしかありません。長いサーベルをもって胸を張って先頭を行進します。大統領の前まで来ると号令一発、高々とサーベルを上げて“頭~左!”と言った感じ。軍国主義の時代を思わせる風情です。この集団の次が陸軍士官学校更には海軍兵学校の学生。こちらは短刀をもっています。

何時の頃かはっきりしないのですが、イラクのクエート進攻、或いはベルリンの壁が取り払われたころだったろうか、いずれにせよ1990年頃だったと思います。この先頭集団、すなわちポリテクニックの先頭リーダーに女性がいたのです。パレードを見ていた人たちから女性だ!と言う声とともに拍手が沸き上がり、「信じられない」「これはジャンヌダルクの生まれかわりだ!」と周囲が騒然となりました。私はそんなに珍しいのかと思いましたが、その後ポリテク卒業の友人から聞いた話では、数年前に女性がポリテクに初めて入学したと言って大騒ぎをした由、その後人数も徐々に増え、当時は例年2~5名くらいの入学があるとのこと。それにしても成績トップならこそ先頭を進むのだという話。フランス人が驚くのも納得です。

皆さんの疑問は「一体パリ祭とは何だ?」でしょうね。それはフランス共和国誕生記念日と言うか建国記念日です。単純に”14 juillet”(キャトーズ・ジュイエ即ち7月14日)と呼んでいますが、1789年フランス革命の発端となったバスティーユ襲撃がこの日なのです。英語では”Bastille Day”です。

ポリテクニックの話を少し追記します。フランスでは高等学校を卒業した後バカロレアという全国一斉の試験を受けて大学入学の資格を手にします。成績に応じて自分の道を進むのですが、一部の秀才は2年間の予備校に進み、再度の厳しい試験に合格してやっとグランデコールに入学します。そのグランデコールの一つがポリテクニックです。大学の授業料は無料ですが、グランデコールの学生は給料をもらうと言います。すなわち公務員としての待遇です。さらに卒業生の大半が官僚や大企業のトップを目指します。日産=ルノーのカルロス・ゴーン前会長もポリテクニックの卒業生です。

もう一つ裏話をお耳に入れます。パリのルーブル美術館の近く、ある日本レストランにミッテラン大統領(当時現役)が隠し子と一緒に現れると耳にしました。可愛い娘さんだとも噂されていました。数年後その娘さんがポリテクニックに入学したと聞きました。今は多分政界或いは官僚として、はたまた一流企業で大活躍していることでしょう。

    フランスあれこれ(14)7月14日はパリ祭” に対して1件のコメントがあります。

    1. 東 孝昭 より:

      追記情報があります。一部の新聞では日産=ルノーのカルロス・ゴーン元会長の学歴がエコール・ド・ミーン(Ecole de Mines)となっています。これもポリテクと並ぶ超一流学校です。念のため調べたところ、1974年ポリテク卒業、1978年エコール・デ・ミーン卒業でした。二つのグランデコール卒業と言うのは他に聞いたことがありません。とてつもない秀才だったことは間違いないと思います。(ご参考まで、東)

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