フランスあれこれ20~シラク大統領を偲ぶ

親日派で知られたフランスの元大統領ジャック・シラク氏が去る9月26日86歳で亡くなったと報じられました。1995年大統領に就任2期12年間ドゴール大統領の後継ぎという期待に応えて立派に職務を全うしました。引退後は色々個人的な問題や健康上の問題もあって政界から姿を消しました。

今年9月30日アンバリッド(廃兵院)で国葬、サンシュルピス教会で告別式、そしてモンパルナス墓地に埋葬されました。

1995年大統領就任直後南太平洋フランス領ムルロア環礁で核実験を強行しました。核禁止の世界的な動きに対する駆け込み的な実験だったのか、それともシラク自身、或いはフランスの国威発揚を考えたのでしょうか。丁度この時期私はパリに駐在していました。その時の思い出をご紹介します。と言いましても大統領に直接お目に掛かる機会などある筈もありません。

この少し前のこと、あるフランス人女性が日本人会からの紹介で私の事務所に現れました。彼女は30歳位だったでしょうか。以前日本に住んだことがあり片言の日本語が出来ました。乳幼児施設の仕事をしているが近年日本企業のフランス進出が目覚ましく、もう一度日本と関わりのある仕事に就きたいというのが趣旨でした。丁度欠員が出来る前でもあり一応面談した次第です。タイミングは良かったものの職種は助手の仕事でパートナーの使い走り、これでは彼女の期待を裏切るものと考えお断りしました。ただし他の日系企業の紹介や問い合わせには協力しましょうと約束しました。以来一、二度近くを通りがかったといって顔を見せていましたが、ある日改めてのご相談という事で面談しました。

彼女曰く、父はフランス外務省出身で日本には日仏会館担当で赴任していました。彼女の日本語はその時のもの。相談の中身は近日外務大臣が日本を訪問することになり、今回の核実験問題で日本との対応をどうするかという事でした。被爆国の日本でもこの件について非常に神経質で国会議員もチームを作って現地に反対運動を繰り広げたと聞いています。

回答は至って簡単、私はこんな話の相談に乗れる立場にはない。でも考えて見るとフランスはドゴール大統領以来第五共和制、大統領の権限が非常に大きく外務大臣でも国防大臣でも反対できないのでは?!もう一つ付け加えれば日本人はすぐ忘れるよ。以上でお引き取り頂きました。

翌日彼女のお父さんから電話を頂きました。「娘への話は非常に参考になりました。また娘の件今後ともよろしくお願いします。」以上でこのお話はお終いです。外務大臣の帰国後の報告は聞いていません。

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