フランスあれこれ79 パリ・セーヌ河畔のブキニスト

世界遺産が存続の危機?そして復活?

パリに旅行された方ならご存知かと思いますがセーヌ川の河畔に並ぶ露店の古本屋さんです。日本からの来客をノートルダム寺院に案内した後よくそぞろ歩きしたものです。

先ず名前ですが何となく英語の“本”に近い発音で、当初は特に注意したことはありませんでした。しかしフランス語の会話の中で古本とかチョットした本という意味で「ブッキャン」(bouquin)と耳にします。これが「ブキニスト」(bouquinistes)の語源でフラマン語の古い言葉のようです。嘗てはフランスの多くの地方で方言が使われ、フランス憲法で「フランス国民はフランス語使うべし」と定められているとも聞きます。ちなみにフラマン語はフランス北部とベルギーとの国境を挟んだ地域の方言で、今も使われている地方の言葉です。

さて、このブキニストですが結構歴史は古く16Cの頃からと言われます。当初はこの頃にできた“ポン・ヌッフ”(Pond Neuf 意味は“新橋”、しかしパリのセーヌに掛かる最も古い石橋 1606完成)の橋上で列を作っていたようです。19Cオスマン(パリを含むセーヌ県の知事)によるパリ大改造で退去を命じられた後川沿いに移動し現在に至ったもの。しかし当時既に確固たる営業権を獲得していたようです。そしてバブル期の頃観光客が溢れ、人気も上昇、1991年ユネスコ世界遺産に登録されました。

2019年4月ノートルダム大聖堂が炎上、続いて2019/2020年頃からのコロナ(Covid-19)の蔓延で外出制限や観光客の激減等で営業困難に陥ったと言う次第。約200店が1000近い本棚を持つと言われていますが昨今はほんの数棚がオープンするだけで正に瀕死の状態と伝えられます。

大聖堂の復旧も着々と進行しており、コロナもようやく峠に差し掛かっています。何とか昔の雰囲気を取り戻せるまで頑張ってほしいものだと思います。

本稿を草稿中(2022.4.20)にちょっと耳にしたニュースがあります。マスクの解除をはじめほぼすべての制限が解除され、更には春の復活祭の休暇などで旅行者が少しパリに帰って来たと言います。コロナはまだまだ収束とも言えず難しい局面のようです。一日も早いコロナとの共存が可能となる時期の到来を祈るばかりです。

(余談)オスマンのパリ改造ですが、産業革命で労働者がパリに溢れ、衛生状態が悪く疫病が蔓延などと言われますが、耳にした裏話では労働問題でストや政府への反発を抑えるための機動隊が出動するにしても細い路地ばかりと言う道路事情で困難を極めた。これが街の改造の最大の理由だ。とはパリジャンの裏の声でした。

(余談2)ブキニストの売り物は表向きは古本、しかし実態は海外からの観光客目当てで、当然古本なんてあまり売れない。絵はがき、ポスターなどパリの想い出、更には小物の装飾品などが主流です。

    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です