フランスあれこれ85 パリっ子のエスプリ

「パリにははっきりしたパリっ子タイプが存在する。いつもせかせかしていて神経質、無秩序といってよいほどの批判的反逆性、軽佻浮薄でからかい好き、常に目覚めているエスプリ、駄洒落好き、などがその特徴である。シャンソニエ(寄席芸人)、カムロ(てき屋)、「ティティ」(カヴロッシュに代表される腕白小僧)といった人物が、パリっ子の典型として知られる。」これは1991年版ミシュランのパリのガイドブック(日本語訳版)に紹介されているパリっ子のキャラクターです。

さてエスプリとは何ぞや?とご近所の友人知人から何度か質問を頂いたことがあります。ご存知のようにエスプリ(esprit)は英語の”Spirit”で精神とか才気、或いはやる気、更に辞書では知性とかウィットなども出てきます。確かにパリっ子の会話にはスパイスのきいた表現や遊びの心は認めるところですが逆に日本人の相手を思いやる心や気遣いに欠けるのではとも思います。

私の見るパリっ子は人との会話は一筋縄では進みません。ドゴール大統領に代表される「ウイ!メノン」(Yes but No!)がいつも顔をのぞかせます。必ずと言ってよいほど一言二言コメントを付け加えます。思い出すのは真面目に、しかも素直に話を聞いていた時ですが、彼が最後に付け加えたひと言、それは「ご清聴ありがとう、但し私の言うことは全て嘘です!」「嘘というのも嘘ですから・・・」要は私からのコメントも反論もなかったので彼があえて一言付け加えたということでした。私も納得、それ以来このジョークを良く利用させて頂いています。

パリっ子のエスプリの根源は教育です。中学生くらいから授業の一環として政治も含めた社会問題の議論があるらしい。いくつかのチームで討論、ほぼ議論があるレベルに来た時双方の立場を交代して再度の討論をすると聞いたことがあります。高校の卒業資格認定試験(通称バカロレア)、これは大学入学資格を得るものですが、この種の筆記試験が必須だとも耳にしました。

確かに物事、事象には表と裏がある。見方や見る立場や角度を変えれば見えるものが違って見えてくる。しかもこの種の反応が出来ないと平等な相手と認められない、従って意地でも異なる局面からの反応をしたがるということでしょう。逆に日本人は誠に素直というか気遣いで人が良いということでしょうか。

私の結論です。日本人の謙遜、控えめな他人への配慮、これに対するパリっ子のセンスのあるエスプリの発揚、やはり見る角度で一長一短、引き分けということでしょうか。

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