フランスあれこれ(7)垣間見た高齢者共同生活

パリの東西両端に大きな公園があります。西は高級住宅街に隣接するブローニュの森で、緑豊かで高級感あふれる落ち着いた森です。東にはヴァンセンヌの森、極めて健康的で庶民的な森というより広大な公園があります。大きな湖が複数あり、散策、ランニング、日光浴、そして動物園や花の公園、更には競馬場といった具合。しかもこちらの方は遙かに歴史があります。12世紀に起源をもつお城があり、14~15世紀に建てられた城の一角に大きな見晴らしの塔(ドンジョン=天守塔)が現存します。私の話の舞台はこのお城の一角でのことです。

今から30年位前の話です。暑い夏の日の午後、フランスの東部を旅行しての帰り道、いよいよ雑踏と狂騒のパリに入る前にひと休みと考え適当なところを探しながら運転をしていました。ヴァンセンヌの森の一角まで来た時、遙かに見える森の一角に数本の赤いパラソルが見えました。ここぞとばかり赤いパラソルをめがけて森に突入しました。緑の木陰に4~5本のパラソルが立ち、夫々にテーブルがあり10名位の人たちが楽しそうに談笑しながらお茶を飲んでいました。車を置いて近づきました。パラソルの向こうの建物から女性が顔を出し、非常に丁重な言葉で「ようこそお訪ね頂き有難うございます。こちらのテーブルは如何でしょうか。」言われるまま席に着いた途端、拍手と爆笑が天を突きました。
この段階でも私はまだよく理解出来ていませんでした。

コーヒーしか出せないとのことでしたが、恐縮しながらおいしく頂きました。そしてこの共同住宅について簡単な説明を聞きました。約20名位の高齢者が共同生活をしていると言います。毎日の生活に必要な作業を全ての人が交代で担当。例えば食事の献立、食料や日常品の買い物、炊事、洗濯、掃除。無論夫々に得意不得意があり、画一的に日程表が出来ている訳ではないものの、総合的に判断して一週間単位で日程表が出来ている由。建物はパリ市が提供するが元はお城の馬小屋だったとのこと。

当時はまだまだ老人ホームに興味がなかったこともあり詳しい話は聞かずに終わりましたが、夕方になると市の担当者が巡回してくるとのこと。と言う事は常駐する管理人は不在という事です。

今から考えると実に良い環境だったと思います。お天気が良ければ森の散策、或いはこのパラソルの下で談笑、夕方にはワインでも楽しむのだろうと想像します。

暫くして日本で旅友が出来ました。この旅友は非常にこまめに活動する人で、旅行ガイドの資格取得のための勉強などもしていたかと思います。旅友の設営で東北に旅行した折、その旅友が同じような老人共同住宅を企画していると耳にしました。思い出しながらヴァンセンヌの共同住宅の話をしました。そのような環境は望むべくもないが・・・
やがてその企画は残念ながら実現に至らなかったと聞きました。

東 孝昭


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