昔の思い出話です。フランスの得意先の人と夕食を共にすることになり、レストランと時間を約束しました。一般論としてフランスの人は約束時間にルーズと言うか好い加減で大体は遅れてくるものです。時には30分近くも遅れることがあります。レストランのカウンターバーでアペリティフを頂いて時間待ちするのが普通です。
ところがその日は既に来ていてカウンターで居合わせた人と話し込んでいました。私もカウンターで一杯頂いたのですが彼らの話が終わりません。喧々諤々、延々と続きます。ボーイがメニューを持ってきて注文を取りに来ます。彼はアペリティフのお代わりをして席に移ろうとしません。時々私にもうちょっと待ってくれと言い続けて・・やむを得ず私はアぺリティフを持って一人席で待つことにしました。彼が席に着いたのは多分30分は経過してからかと思います。
別の日の話です。あるカクテルパーティーの思い出です。日本のような主催者の挨拶などの儀式も乾杯もなくパーティーはいつともなくスタートします。シャンパンを頂いて、すぐさま「何方から?」「日本ですか!」「こちらに駐在?」と言った具合で会話が始まります。まあ例えばですが日本の話になったとすると、それを聞いていた人もすぐその会話に仲間入りです。一人が日本について発言するともう一人はそれに追加発言をするか異論をはさむか、何れにせよ気が付いたときには私は既に蚊帳の外と言う次第です。
その後私の駐在期間を通して知りえた結論を申し上げると、フランス人の議論好きの根源は教育にあると思います。中学時代にはすでに文学は無論哲学を学び、教室などで二つの立場に分かれて議論をするとも聞いています。そしてその議論は時には政治論議迄とも聞きます。
高校を卒業すると大学進学資格を取るための試験があります。いわば共通一次で合格点を取らないと大学進学が出来ないという感じです。たとえ大学に進学しなくともこれが単に高校を卒業したという以上のステータスになります。そしてこれさえあれば成績によって自分の希望する大学に進学できます。一般には個別の大学の入学受験はありません。問題はこの資格取得の試験(バカロレア)の試験に議論の能力が必須だと言うのです。それは物の本質を見極める、或いは色々な観点からものを見るという習慣を身に着けるという事でしょうか。
この漫画に描いた”Oui!” “Mais non!”(ウイ、メ、ノン)はフランス人の口癖と言えそうです。「分かった、でもね!」と言った感じでしょうか。ドゴール大統領が連合軍、特にアメリカに助けられて第二次大戦を乗り越えたのですが、そのアメリカに対し常に言い続けたのがこの ”Oui mais non”で、遂にはメノン大統領とあだ名されたこともありました。要は一筋縄で相手の意見に賛同しないと言うフランス人のど根性と言えます。でも最後は必ず握手で終わります。

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