フランスあれこれ80 パリの異端者(2)=ポンピドー・センター

パリに二度目の赴任をした際、私の目に異端と思えるもう一つの建物がありました。それは所謂 ”ポンピドー・センター“ です。
パリ中央市場が移転したのは前回の駐在時代の最後のころ。その後跡地に美術センターとショッピングセンターの出来ていることは聞いていました。しかし、当時の大統領の名前のついた美術センターを見た時、一瞬これは手抜き工事か?と思った次第です。外観は鉄骨とパイプばかり、どこかの工場か?とも思える風情で歴史の町パリには許しがたい不向きの建築物だと思いました。表通りには各階を繋ぐエスカレーター、裏側は全く工場を思わせるパイプラインばかり。果せるかな先のモンパルナスタワー同様大変な議論が巻き上がったようです。

正式には「国立芸術文化センター」(通称ポンピドー・センター)と言うだけあって、設営されている内容は国立近代美術館、産業創造センター、映画館、音響音楽研究所、図書館などで無駄なスペースを持たない合理性には説得力があり、私としては一応納得、しかし今一つパリには添いにくいな~と言う複雑な気分でした。そしてこの感情は最後まで切れることがありませんでした。

隣接する「フォーラム・レアール」という一大ショッピングセンターも同じ中央市場の跡地に設営されていて、今ではパリ観光の目玉の一つです。私には古い歴史を踏みにじると言う印象はどうしてもぬぐい去ることは出来ませんが、それは私自身が今の時代について行けない老人という事なのでしょうね。

(追記)中央市場は古い街の中央付近で歴史的にはノートルダム寺院と同じ時代のものでパリの「食」をしっかり支えて来たもの、しかも近くに当時の古い教会や墓地もあった場所でパリ発祥の地でもあります。ある時期遺骨を掘り出してモンパルナス近くの石切り場跡に集積したのがカタコンブです。(先に寄稿させて頂いた「カタコンブ」については、こちらからご参照ください。)

    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です