笑説「ハイムのひろば」6~苦闘

6 苦闘

期待していたサーバーからの返事はがっかりするものだった。ただ、西野にとって、期待とは裏腹にある程度予測していた回答でもあったので、この結果でこのサーバーを云々するつもりはない。というのはある意味で当然の回答だったからだ。実はこの回答を予測して次の問い合わせをどのような形でするかは準備していた。つまり、先方の出方を待っていたということだ。

このサーバーには、問い合わせに対して回答をした後すぐに、その回答がユーザーにとって満足がいくものであったか、そうでなかったかを聞いてくるアンケート・システムがある。案の定すぐにアンケートが送られて来たので、西野はすかさず回答した。答えは、当然「不満足」だ。

その理由として、「WordPress」の使用を推奨しておきながら、それを使ったことで起きたトラブルに対しては一切のサポートをしないというのは、ユーザーを失望させるものだ。これまでのパフォーマンスには十分満足しており、高い点数をつけて友人にも推薦していたが、今回の対応には大いに不満を感じると大幅な減点を通告した。

そして、とりあえず、もっとユーザーに寄り添った対応をしてほしいと要望を伝え、困っている状況の詳細を伝えてアドバイスを要望した。ひそかに、この後のやり取りでプラスアルファの助言を期待してのことだ。そうしておいて、結局は自分でやらざるを得ないかもしれないと覚悟して、また修復作業に戻りキーを打ち続けた。

昨日、ネットで検索した同様のトラブルの記事をもう一度見直し、いくつかトライしてみたがうまくいかない。記事はまだまだあるので別の記事をいくつか見て、それぞれの回答事例を試す作業を続けた。解決法として10個も例を示しているサイトを見つけたので、これは期待出来ると思い、ひとつひとつ潰していった。しかし結果は出なかった。

この作業を続ける一方で、西野は別の作業もするべきかどうか迷っていた。それは、さらに先の最終的な手段として考えている「引越し」の準備に取り掛かかることだ。5年ほど前に創った自分の故郷を取り扱ったホームページで少しだけ似た現象を経験した時に、引越しをすることで事なきを得たことがある。この手法は手間はかかるが、最後の手段として頭の隅に置いてある。しかし、一日も早く修復したいという気持ちが強く、結局はスパッと解決できる方法を期待して、もう少し続けることにした。

この間少しだけプラスになったこともある。ネット上でたくさんのケースをチェックしたので、一部関係のありそうな情報は得ることができた。例えば、プラグイン(拡張機能)の中には、ある状況下では全く問題なく機能するのに、WordPressやテーマのバージョンアップ時に対応しなくなるものもあるということを知った。そのプラグインを削除してみると問題が解決したと報告している人がいる。ならばと、同じことを試みたが変化なし。結局この作業は丸2日間続けたが結果は出なかった。

3日間続けてみて結果が出なければ、最終手段に取り組もうと決め、ネットの情報を探しつつさらに続けた。それは孤独と焦燥の戦いだった。今まで起こったトラブルはごく短時間で修復してきた。経験のないトラブルでも解決することで新しいことを覚え、自分のスキルアップにつながると喜びすら感じていた。むしろトラブルは歓迎すべきものとさえ思い始めるほど自信を持っていた。その自信が今や崩れ始めている。

~つづく~

蓬城 新

    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です