囲碁、そして仲間たち~囲碁今昔

[囲碁今昔]
囲碁は数千年ほど前に中国で発明され、遣隋使や遣唐使として中国に渡った僧が日本に持ち帰ったと言われています。平安時代には宮廷でも愛好され、紫式部や清少納言も囲碁を嗜んだようです。江戸時代に家元制度ができ、幕府から庇護されたこともあり大いに発展し、「囲碁は日本の文化」とも言われるようになりました。

明治になって一時衰退しましたが、昭和に入り新しい布石が発表されると、囲碁ブームが起き燎原の火のように囲碁を打つ人が増えたそうです。戦前の話ですが、倒産寸前の平凡社が「新布石」を紹介した囲碁の本を発行したところ、大いに売れて会社が立ち直ったとも言われています。

しかしながら現代日本では、囲碁人口はだいぶ減ってきました。35年前、私が転勤で東京に出てきたころは駅の近くには必ず碁会所があり、休日などに碁を打ちに行くといつも満席だったのを覚えていますが、今では碁会所を探すのがひと苦労です。それでも、最近はご婦人の囲碁愛好家が増えているのは朗報です。日本棋院で開催される囲碁大会にも男性に交じって女性の参加が多くなりました。中には女性だけのチームを作って、団体戦に参加してくる人たちがいます。現在、私は3か所で囲碁を教えていますが、そのうち2か所は女性ばかりの集まりです。

本家の中国では20年ほど前から国家が囲碁普及に力を入れ、全国から有望な子供を選抜して北京に集めて猛特訓した結果、現在では世界一の座をほしいままにしています。中国の囲碁人口は2千万人以上と言われ、多くの中国人が囲碁を楽しんでいるようです。

お隣の韓国では人口が日本の3分の1にもかかわらず、囲碁人口は倍以上と云われています。今や囲碁は世界中で愛好されているゲームで、ヨーロッパやアメリカでは若い人たちの間で人気が高まってきています。東ヨーロッパ(ロシア、ウクライナ、ポーランド等)では昔からチェスが盛んでしたが、チェスは高段者同士で対局するとドロー(無勝負)が多く面白くない等の理由で、囲碁に転向する人が多いようです。

また、10数年前からの現象としてインターネットを利用して囲碁を打つ人が多くなっています。世界中どこに住んでいてもインターネットで簡単に相手が見つかりますから非常に便利です。私も10年前、インターネットでウイーンの若者に一年間ほど囲碁を教えたことがありますし、南アフリカの人と対局したこともあります。特に最近はAIを使った囲碁ソフトが開発され、世界トップと言われる中国のプロ棋士を打ち負かすというニュースが世界中を駆け巡りました。とはいえ、碁盤を挟んで相手の息遣いを感じながら、「手談(*)を交わす」という醍醐味は捨てがたいものがあります。

(*)手談:言葉を交わさなくても囲碁を打てば心が通じ合うところから。
(日本棋院刊「用語小事典」より)

ヨーロッパでは、毎年夏にヨーロッパ囲碁大会(European Go Congress: EGC)が開催され、アマチュアの囲碁愛好家が家族を連れて参加するものや、若者の中にはテントを持ってバカンス気分で集まって来るものもあります。この囲碁大会は2週間に亘って行われ、毎日午前中に1局だけ打ちます。午後はプロによる囲碁講座や指導碁がありますし、早碁のミニ大会を行うなど、参加者を飽きさせないように工夫しています。中には家族サービスで観光をする人たちもいます。このように長い期間の囲碁大会は日本人の感覚ではとても理解できませんが、毎年千人近い囲碁愛好家がこの大会を目指して世界中から集まってきます。

今年はイタリアのピサ市で開催され、私も囲碁仲間6人とともに参加して海外の囲碁仲間と交流してきました。大会のオープニングでの主催者の発表によると、1,400人が申し込んできたとのことです。毎年、日本人は100人前後が参加しますが、特筆すべきは中国人が200人以上も参加していたことです。10年ほど前、中国からの参加者は数人程度でしたから、文化の隆盛は経済の発展とともにあることが良くわかります。
(この項おわり)

兵頭 進


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