イラン追想(その29)テヘランの思い出(16)

機上から見たイスタンブールの町はカラフルで、イランの風景とは異なっていました。

特に、屋根の形状が三角形で、切妻であることが印象的でした。雨の少ないイランでは、ほとんどの建物の屋根がまっ平で灰色だったのです。

しかし、私は旅行者のように旅の楽しさを感じることができませんでした。

任務を遂行できるかが急に心配になってきました。

もし手荷物がチェックされ、大量の紙テープを運んでいることがわかった場合、スパイの容疑をかけられ拘束されるのではないかとの思いが胸をよぎったからです。当時トルコは東西のスパイが暗躍する地であると、まことしやかに囁かれていたものでした。

しかし実際は、なんのチェックをされることもなく、あっけなく通関を通過することができました。

それからイスタンブール事務所に飛び込み、事情を説明した結果、紙テープが機械にかけられ、コトコトと通信文を発信し始めました。やがて数時間をかけて、世界中に向けて何百もの通信文が発信されていったのでした。

風戸 俊城

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