追憶のオランダ(18)歩け歩け!

もう40年近く前になると思いますが、テレビのニュース番組か何かで面白い話を紹介していました。世界中から現役の軍人、アスリート、さらに民間の健脚自慢の人たちが集まって何日も長い距離を歩き通すというユニークな大会があり、日本からも毎年自衛隊員なども参加するのだと。この時は場所がヨーロッパということだけでどこの国なのかまでは覚えておりませんでした。しかし、オランダに住むようになって、それがオランダで毎年開かれる正式名称 De 4 Daagse(単に「4日間」という意味のオランダ語です。英語では、Internatinal four days marches Nijmegenといいます)という有名な国際大会であることが分かりました。オランダ東部、ドイツ国境に近いナイメーヘン(Nijmegen)という町で毎年7月第3火曜日から4日間開催されるウオ―キング大会でした。世界中から歩くことに自信のある人たちが集まり、30km・40km・50kmという距離にクラス分けされ、各々が4日間毎日その同じ距離を歩き通すという単純と言えばこれほど単純なことはないというくらいのユニークな大会です。参加者は自分に合った距離を選び、4日間合計120・160・200kmというとてつもない距離を踏破することになる訳です。

これは、いわば本式のレースではありますが、この時期オランダ各地で大人から子供に至るまで、地区単位や、会社仲間や、あるいは学校行事としてなど、いろいろなグループで近隣を3km・5km・10kmと体力に見合った距離を設定して夕方から一斉に歩きまわる光景が見られます。オランダのこの時期は日が長いので、夕方から数時間かけてこのユニークなイベントを4日間楽しみます。その距離を踏破するとメダルがもらえます。5年かけて5個目のメダルをもらうと、今度はさらに立派な大きなメダルをもらえます。

7月に入ると、同じ日にたくさんのグループがそれぞれ設定したコースで歩き出すと、お互いのコースが錯綜していたりすることはよくあります。また、大きなグループになると先頭から最後尾まで随分と距離が空いてしまうことがしばしばです。当然信号待ちもあるので、交差点では四方に長い行列ができることになり、そんなときなど、自分たちの進む方向をしっかり覚えておくか、地図でその都度よく確認しないと大変なことになります。全員がすべて知り合いという訳でもないですから、間違って他のグループについて行ってしまい迷子になる子供(大人も)も出来てきます。私は子供が通っていた関係もあり、ロッテルダム日本人学校のグループの引率役として他の父兄たちと一緒に毎年歩きましたが、大人も含め何人かは必ずコースを外れて大回りしたり迷子になったり、皆がゴールしてもなかなか帰ってこないというハプニングも何度か経験しました。出発地点が日本人学校付近ですから、たとえ迷ったとしても住所さえ言えれば親切なオランダ人が帰り道は教えてくれます。

この地域コミュニティーごとの小さな大会の呼び名は、Avond 4 Daagse (4日間の夕べ、という意味)、あるいは日本人社会では「歩け歩け大会」と呼んで楽しんでいます。

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