「ミカド」「ゲイシャ」「ジャパンミックス」、これらはある同じ食べ物に付けられたブランド銘だが、一体どんな食べ物でしょう?

答えは、米で作った「おかき」「あられ」なのだ。おかき・あられの袋に何やら妙なデザインでミカド・ゲイシャなどという文字が躍っている。もちろん、アルファベットでそう書いてある。これは何という命名か!?これらの言葉でしか日本の商品であることが表現できないのか、もっとましな名前は思いつかなかったのか、日本人としては非常に淋しい気持ちになったものである。

でも、正真正銘の日本のおかき類は時たま手土産で日本からの来訪者が持参して頂くくらいで、この「ゲイシャ」を怪しげな華僑かコリアン経営の食材屋の店先で発見した時は、充分に胡散臭さを感じつつも、ついつい買ってしまったものだ。しかし、いざ食してみると原材料からして多少の品質の良し悪しはあるとは思うが、殆ど純正日本産おかきに飢えている日本人としては大した問題もなく食べられた。というより、久しぶりに口にしたこともあり、悔しいけどうまかったと言わざるを得ない。日本品と比べても極端にひどいということだけはなかったように記憶している。

しかし、である。名前だけはもっと日本らしい洗練されたものにできないものか。これは、私が日本人だから言えることで、おそらく生産者はオランダ人とか日本人以外の他の国の人々を対象にしているはずなので、「ゲイシャ」の方が日本の食べ物としてよほど通りがいいのだろうと、一部納得してしまった。

食べ物の名前については、もう一つおやっと考えさせられたものがある。それは果物の「ミカン」である。オランダは果物だけでなく野菜なども温暖な外国産のものが随分売られている。ある時、青空市場の果物屋の店先にオレンジやらあまり見慣れぬ外国産の果物が並んでいる中に、少し小ぶりだが温州ミカンによく似たものが並んでいるのを見つけた。懐かしくて手に取ってみると、確かに我々が今まで食べていたような温州ミカンのようだ。そのミカンにはまたご丁寧にいちいち小さな赤い楕円形のラベルが貼ってあり、そのラベルにはSATSUMAと書かれているではないか。そのSATSUMAは薩摩以外に考えられなかったが、なぜ温州ミカンがSATSUMAなのか?そんなことが頭の中をよぎっていたが、その時は店先で試食させてもらい、これはミカンだと確認して、まず「Een kilo(1キロ)」と言って買って帰って食べた。

SATSUMAという命名の疑問については、その後もいろいろ考えた。おそらく幕末には温州ミカンの産地である紀州藩よりも薩摩藩の方が英国との関係が深くミカンの欧州向け輸出に力を入れていたのではないか、その名残で温州ミカン= SATSUMAとなったのではないかなどと勝手な想像をしながら、それ以降も見つけるたびに買っていたことが懐かしく思い出される。でも、私が買ったものは、少なくとも日本からの輸入品ではない。どこか地中海沿岸かどこか暖かい欧州に近い土地で栽培されたものではなかろうか。幕末のSATSUMAの味を知ったものが苗木を日本から移植して栽培されているものではなかろうかと想像はさらに膨らむ。

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