追憶のオランダ(22)古地図の話

オランダで蒐集したものが二つある。一つがアンティークタイルで、もう一つが古地図である。古地図と言っても17-18世紀につくられたエッチングで印刷された地図で、オランダの各都市がそれぞれ一枚の中に克明に描かれている。その多くが城塞都市として星形やらの防御地形で外濠を備えている姿がよく分かる。

ある時、ハーグで夏場の木曜と日曜に開かれる青空骨董市を覗いていて、昔の風俗画や植物画などに混じってその古地図が売られていた。私の目当てはタイルで、何か掘り出し物でもないかと捜しながら何十軒もあるテント張りの店を軒並み見て回っていたのだが、その途中で一枚の古地図が気にいってしまったという訳。B4版くらいの一枚で、上の四分の一くらいに町の遠景が描かれ、その下に上空から見た町全体の地図が描かれている。ステゴザウルスの背中のトゲのような三角の出城を町の周りにいくつも備えた防御地形で、BOMMELという地名らしきものが書きこまれている。

何百ギルダーだったかは忘れたが、ついつい買ってしまった。そして、帰ってすぐに調べてみた、どこだろうBOMMELとは。しかし、調べると言ってもその頃は今のように便利なインターネットもないし、実際に日常使っているロードマップや、10万分の1の地形図くらいしか調べる手段がなかった。実際、10万分の1の地形図をその町の形だけを手掛かりに調べ、結局オランダ南部のヘルダーラント州のZALTBOMMELというところだと分かった。

それ以降、度々タイルと古地図を求めてハーグの青空市場には出かけ、店の親父とも仲良くなり、店に出していないものも見せてもらうようになった。そして、何枚も何枚も買うことになった。店の親父は、いいカモが出来たと、ほくそ笑んでいたかもしれない。それはともかく、それらの古地図はオランダの昔のガイドブックのような何冊かからなる大部の本をバラバラにして、その1ページの地図だけを切り離して売りに出されていたものだと分かった。地図の作者の名前が地図の片隅に書かれていて、ISSAC TIRIONと読める。このTIRIONさんのエッチングは実に美しい。

古地図関係でいろいろ現在の出版物をいろいろ見た中に、TIRION社という地図などの出版会社があるが、ISSAC TIRIONの子孫の会社なのか?・・・。その関係はまだ調べられてはいない。


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