追憶のオランダ(31)セントラルヒーティング

オランダの冬は、確かに寒い。雪は少ないが、そこらじゅうカチンカチンに凍る寒さ。でも、家の中ではとても快適に過ごせます。というのも、殆どの住宅では窓はすべて二重ガラスの窓になっていて、窓が大きい割には熱が逃げにくい造りになっています。また、私たちが住んでいたような棟割長屋でも、暖房はそれぞれの家庭ごとにボイラーが設置されていて、セントラルヒーティングですべて部屋にラジエーターが設置されているので空気も汚さず、また石油ストーブなどのように余分な水分を出さないので外がどんなに寒くても窓も結露せず快適です。
余談ですが、筆者が少年時代を過ごした札幌の冬を思い出しました。当時まだ石炭ストーブが主流で、家屋は防寒対策として一応ガラス窓が二重になっていました。つまり外窓と内窓の間にある空間で多少なりとも断熱をしていたのです。しかし、ストーブの上には乾燥し過ぎを防ぐため常にヤカンなどが置かれていて、朝になり内窓を開けると部屋の水蒸気が外窓のガラスの内側一面に大きな霜の花柄模様を作っていました。これはこれで、毎日ひとつとして同じものがないほど変化に富み、鑑賞に値すると当時も思っていました。オランダでは、似たような気候風土ながら、二重ガラスの窓と、セントラルヒーティングのため、この花模様は見られませんでした。

そんな冬のある土曜日の夕方、何だか部屋が少し涼しくなってきたようなので、何かおかしいと思いラジエーターを触ってみたところ全く熱くないのです。どうやら、セントラルヒーティングのボイラーが故障したようなのです。年中、種火が付いていて、温度センサーで暖房が必要な温度(大体20度で設定されています)になると自然に稼働するようになっているのですが、その時は何かのはずみで肝心のボイラーの種火が消えてしまっていたのです。さて、困ったことになったと思いましたが、どうしたものか分からず、月曜日まで寒いのを我慢かと半ば諦め気味に先輩格の日本人に電話でそのことを話してみました。すると、信じられない答えが返ってくるではありませんか。このトラブルはガスを供給している地域の会社に電話すれば、たとえ休みの日でもすぐに修理に来てくれるというのです。これは意外や意外、この時の驚きはまた格別のものでした。日本と比べ、休日は店も何もかも休みでおよそサービス精神などないものとこちらが勝手に思っていただけにほんとうにいい意味で驚きました。暖房が使えなくなるということは冬場のオランダでは命にかかわることでもあり、こればかりはいかなる時でも24時間対応をしてくれるというのです。この先輩も以前に同じことを経験されたとのことで、私と同じことを思ったそうです。

電話すると15分程度で修理の担当が駆けつけてくれあっという間に修理完了。しばらくするとまた快適な暖かさが戻ってくることになり、おかげで一家ぐるみでの凍死を免れました。

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