追憶のオランダ(45)ヒートホーン

ヒートホーン(Giethoorn)はアムステルダムの北東120kmに位置する小さな村で、聞くところによると、ここは「オランダの小さなベネチア」と呼ばれているそうだ。
まず、その地名について一言。筆者自身、会社の同僚から一度観ておくといいよと勧められた観光地の一つ。地図にも出ているからということで、地名のスペルまで聞かず、後からロードマップで調べればすぐわかると思っていた。しかし、いくら調べてもなかなか見つからない。地名を聞き間違ったかなと思った。確かにヒートホーンと聞いたのだが・・・。なかなか地図上で場所を探し出せなかったその理由は、オランダ語のGから始まる言葉の難しさのためだった。このGから始まる言葉の音は日本人には殆どはなじみのない音で、あえてオランダ語の発音をカタカナ表記すると、ヒートホーンかヒートホールンとなる。最初の頃はこんなヘマをよくやっていたものだ。

余談だが、ある程度年配の方々ならご存知だろう、1964年の東京オリンピックの柔道無差別級で金メダルに輝いた巨漢、アントン・ヘーシンクを。彼の名字はGeesinkと綴り、これでヘーシンクと読むのだ。
もう一つ言うと、それもオランダで割と有名だったサッカー選手、フリット。彼のことを調べようとした時も苦労した。「フ」で始まるから、FあるいはVのところを調べたが出ていない。実はこれもGから始まる名前だったのだ。書くとGullitであるが、そんなの日本人には想像できるか!
因みに、Vの発音も澄んだFの音になるので、これも最初違和感があった。あの有名な画家ゴッホもオランダ流発音は「フィンセント・ファン・ホッホ」としか片仮名表記できない。日本で言い慣わしている「ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ」という表記は実際の発音からは程遠い感じがする。

つい、話が大きくそれてしまったが、本題に戻ろう。

「奇妙な地形(1)」でもご紹介したが、ここヒートホーンでは昔泥炭を掘り取った後に出来たボーベンワイド(Bovenwijde)という大きな水溜まりとその水を排水するための水路を観光にうまく活かしているのである。実際、そこには3000人程度の人が生活をしていながら、自分たちの住居の周りの水路から観光客に自由に見せているのである。見る方も、見られる方も、実にあっけらかんとしている。排水のための水路が村を縦横に巡っており、その水から少しだけ(ほんの少しだけ)高い陸地の部分に昔ながらの茅葺の民家(それも古民家というべきか)が立っている。いずれの家もきれいに手入れされ、家周りの貴重な地面は庭としてきれいに緑に覆われて、花壇なども作られている。おとぎ話にでも出てきそうな風情さえ感じられる。ただし、それらの家々を結ぶ道路は殆ど見あたらない。言わば、水から少し顔を出している浮島のようなところに皆それぞれ住んでいる格好だ。どうやって生活しているの?心配にさえなる。主な交通手段は、水路を走る舟である。その水路を行くと、たまに家と家とを連絡する水路を跨いだ木製のアーチ状の橋がかけられているところもあるが、いわゆる道路で結ばれているわけではない。
訪れる観光客は、この村の入り口付近の駐車場に車を止め、水路を行き来する小さな観光用のボートで村の中を巡る。

「オランダの小さなベネチア」、水と住居の関係から言えばそう言えなくもない。日本なら、水郷ということになろうが、やはり生活するにはかなりの不便さが付きまとうのではなかろうか。前述のレーウワイクでは細いながら対面通行こそかなわないが、一応車で自分の家まではたどり着ける道路があるが、ここヒートホーンではそれもない。なんという徹底ぶりか。それがむしろ、この村の「売り」なのだろう。

    追憶のオランダ(45)ヒートホーン” に対して1件のコメントがあります。

    1. t_nishi より:

      「ヒートホーン」 初めて聞く地名です。

      写真や、「昔ながらの茅葺の民家・・・」とか「おとぎ話にでてくるような風情・・・」とかの文章を見ると、道路が水路になっていることを除けば「コッツウォルズの歩き方」で紹介した民家を彷彿とさせます。

      一度行ってみたいですね!

      八咫烏

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