追憶のオランダ(53)キューケンホフ

キューケンホフ、この名前はご存知の方も多いのではないかと思う。チューリップで有名な、アムステルダム近郊のLisseという町にある植物園である。名前そのものの意味は厨房・台所ということで、それにしても奇妙な名前がついている。

オランダの冬は、雪はあまり降らず、凍てつくような寒さが厳しく、近辺の水路は冬の間は殆どがカチンカチンに凍り付く。しかし、3月中旬頃になるとようやく寒い冬もそろそろ終わりを迎え、皆が春の到来を感じる。殺風景な冬も実は2月下旬頃からはあちこちにクロッカスが咲き始め、それを追うように3月頃からはチューリップが芽を伸ばし出す。ちょうどその時期3月中下旬からの約2か月間、5月中下旬くらいまで期間限定でこのキューケンホフは開園する。その間世界中からチューリップを見に多くの観光客が訪れる。私ども家族も何度も見に行った。30ヘクタール以上の広大な園内には、こんな品種があるのかと思うくらいの多くの個性あるチューリップが一面に植えられている。約800種類、7百万株以上毎年植えられるとも言われている。確かにこんな光景はそれまでにもみたことがなくただただ圧倒される。

しかし、よく見ると、これは単なる見せるだけのチューリップを植えた花壇ではないことがわかる。それぞれ品種ごとにそれを育てた(品種改良をした)会社なり組織の名前が品種名とともに表示されている。それは、見て目を楽しませるだけではなく、花卉産業の一大展示場となっていることに気付いた。おそらく、その出来栄えを見て、その後商談が行なわれるのだろう。因みに、チューリップは17世紀に小アジア(現在のトルコ)あたりの野生種であったどちらかというと貧相な花を、オランダで園芸種として改良を重ね、現在のような多種多様なチューリップになっている。一時は、一粒の球根が非常な高値で取引されるなど一大バブルを引き起こし、莫大な財を築いた人、反対に破産をした人を出した歴史も持つことも有名な話である。

キューケンホフに近づくまでに、高速道路を降りてしばらく田舎道を走るのだが、その周りにもずっとチューリップ畑が広がっている。時期によってはまだ花を咲かせていなければ緑に見えて何か野菜でも作っているのかと思うが、そうではなく、右の写真のようにほとんどが球根を育てるためのチューリップ畑なのである。シーズンの土日ともなると、園まで続く田舎道は車の列が連なり、遅々として進まない。このキューケンホフの公園のある場所は、古くは貴族の狩猟場だったようだが、第二次大戦後、公園として整備され現在のような姿になったらしく、チューリップ園としての歴史はそれほど古いものではない。そんなキューケンホフだが、じつは私はこの公園にオランダ人夫婦を案内したことがある。この年配の御夫婦、オランダの一番南のマーストリヒト近くに住んでいて、名前だけは聞いて知ってはいたらしいがその時まで実際にこの場所を訪れる機会がなかったらしい。オランダを代表するキューケンホフに日本人がオランダ人を案内した?おやっ、と思われるかもしれないが、そういうことも実際あったのでした。愉快愉快。

 

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