追憶のオランダ(76)赤ちゃん誕生

どこの国でも赤ちゃんの誕生は喜ばしく、家族でなくとも微笑まずにはいられなくなる。住んでいる近所を散歩していて、ふと気づいたことがあった。あるお宅の玄関先に色とりどりの風船や様々なもので飾り付けをしているのだ。何か祝い事があったかとは思ったが、後で聞けばその家に赤ちゃんが生まれたことを知らせるサインとのこと。ああ、こうして皆にも知らせるのか、なかなかいい風習だと感じた。

それから、会社の同僚に赤ちゃんが生まれた時のこと。生まれたと聞いて、しばらくして彼が社内の皆に何やら持ってきたらしく、賑やかな声が聞こえてくる。彼が持ってきて皆に振舞っていたのは、ラスク(オランダではBeschuitという。発音はビスハウトに近い。)の上に水色(薄いブルー)のなにか粒々の、どうもお菓子のようなのだ。それは赤ちゃんが生まれた時に周りに振舞うオランダ特有の習慣らしい。オランダ人が大好きなアニスシードに食用色素で色を付けた砂糖で固めてある子供の誕生を祝う定番のお菓子なのだ。男の子の時は水色、女の子の時はピンクということらしい。さっそく、ご相伴にあずかった。大抵の日本人はこのアニスというのがあまり得意ではないらしく、私がそのお菓子を平気で食べるのを見て、その同僚はとても驚いた顔をするのだ。彼は、もしかすると私は多分このお菓子を食べないかもしれないと思っていたようだ。しかし、私は彼の予想を裏切った、全く大丈夫。それ以前にも、私はオランダ人が好きなドロップという一見那智黒という黒飴のような色のアニス味の飴を平気で食べているのを見て驚かれたことがあったが、彼はその事実を知らなかったのだ。「あ、そうか。お前はドロップも食べるのか。」と改めて感心されてしまった。
そのお菓子は、粒々のアニスシードの実の部分は砂糖がかかっているがこの実には特有の髭が出ているので、これがアニスシードであることは食べる前から分かった。この砂糖で固めたアニスシードの菓子のオランダ語の呼び方がこれまた面白い。Muisjes(ちっちゃいネズミちゃんという意味。発音はマウシェスに近い。)という愛称なのだ。おそらく形から発想した名前だろう。砂糖で固まったところがネズミの胴体、アニスのひげの部分がネズミの尻尾に見えるから?上の写真ではひげの部分がよく見えない。この解釈が正しいかどうかはオランダ人に確かめてはいない。ともかく、ラスクにこのmuisjesをのせたもの(Muisjes op beschuitという)を皆に振舞って赤ちゃんの誕生を祝うのである。

 

    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です