オランダは日本のように店が夜遅くまで開いているということはなく、レストランとかは別にして、通常の日用品などを商っている店は早々と閉まってしまう。ただ、それでは皆不便に違いなかろうが、それはそういう昔からの習慣だから仕方がないと思っているようす。しかし、やはり不便さには抗しきれなかったのか、昔からの慣習を破り、我々が生活をしていた頃にも「週に一度だけ」曜日を決めて夜遅く(確か10-11時頃までだったと思うが)まで店を開けるようになっていた。町によってその曜日は違っていたらしいが、ロッテルダムでは金曜日がそうだった。「Late Friday」といって、この日は店が遅くまで開いているので、私が仕事を終えて一旦家に帰ってからまた家族と一緒に食事や買い物に出かけたものだ。別に買い物をしなくても、まだ店が営業をしている明るい夜の町に家族そろって出かけるのはある種の解放感というのもあり、それはそれでいいものだった。
買い物と言えば、食料品などは近所にあるスーパーマーケットで十分だ。私の住んでいる近所にもアルバートハインというオランダ全国に店を持つ最大手のスーパーマーケットや、デントームという店もあった。しかし、野菜などの生鮮食材などは、毎週市がたつ青空市場によく買いに行ったものだ。場所はロッテルダムセントラムのBlaak(ブラーク)の広場。すぐそばに有名なキュービックハウスなどがある。毎週土曜日には多くのテント張りの店がでる。食料品から日用雑貨、お花、植木等々、ほとんどの生活用品が揃っている。みな対面販売だから、別に買い物をしなくても見物してまわるだけでも結構楽しめる。オランダは多民族国家なので、いろんな国の珍しいものも売られているし、いろんな人種にも出会える。
また、オランダ人は非常に気さくで、店の商品に触っても別に文句を言われることはない。私はそこまではしなかったが、オランダ人は平気であちこち味見をしてから買うこともしているようだった。とてもおおらか。その点では同じゲルマン民族ながら、隣のドイツとは大分違う。ドイツでは勝手に店の商品を触ることはご法度だ。
冬場になると、私はBlaakの市場に出る屋台のベトナムルンピアを食べるのが楽しみだった。ベトナム風揚げ春巻きであるが、香辛料が独特で一度食べてからというもの病みつきになった。その熱々をほう張りながら店を次々覗いて回る。同じルンピアを持った人、フライドポテトの三角の入れ物を持った人、それぞれの匂いを振りまきながらざわざわと雑踏の中をすれ違う。
野菜などは、もちろん少量でも売ってはくれるが、大体はキロ単位でとなる。だから、果物・ジャガイモ・玉ねぎとか買い出すと、あっという間に4-5キロになってしまう。重くなると一旦車まで戻りトランクに放り込んで、もう一度引き返してまた市の雑踏の中をブラブラ見て回る。
いくつかある八百屋の中の一つにとてもひょうきんなオヤジがいた。その人が、先日日本のテレビ局の取材を受けていたらしく、偶然付けたテレビの街歩きの番組に出ているではないか。Blaak 青空市場の有名人だったのだ。しかし、往時の市場の風景もオヤジの姿も残念なことに写真としては全く残してなかった。今はおそらくガラリと様変わりしていることだろう。

 

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