ロックフェラーの素顔(1)

はじめに

「ロックフェラー」という名前をお聞きになった方は多いと思う。例えば、「ロックフェラー財団」とか、ニューヨークのマンハッタンにそびえる「ロックフェラーセンター」を通じて。しかし、ジョン・D・ロックフェラー(以下JDR)という人物についてご存じの方は、日本では少数派かもしれない。

JDRは、日本では一般に石油王として知られている。彼の創業したスタンダード・オイルは、米国石油市場の9割を握り、その結果、彼は世界一の大富豪となった。ただし、その過程では、多くの悪評が流された。「守銭奴」という見方すらある。それらの中には、事実と異なるものも少なくない。

また、ロックフェラーというと、日本ではユダヤ人という誤解をしている人が多いことにも驚く。おそらく、「世界的な大富豪はみんなユダヤ人で、互いに協力して陰謀を張り巡らせている」という根拠のない創作から来るものであろう。JDRの父方は、南仏の出身。母方はアイルランド出身の厳格なバブティスト(キリスト教の一派)である。従って、民族的にも、宗教的にもユダヤ人とは無関係である。

一方で、JDRは、シカゴ大学を再建し、ロックフェラー医学研究所やロックフェラー財団を設立した、偉大な「慈善事業家」という側面も持つ。「守銭奴」と「慈善事業家」。この全く異なるイメージのどちらが本当のJDRの姿なのか?世界一の富豪の生活とはどのようなものであったのか?この小論は、こうした問いに答えを出そうという試みである。

なお、この連載を書くにあたり、ニューヨーク市の北にあるウェストチェスター郡ポカティンコヒルズにあるロックフェラーの邸宅や、ロックフェラー家の遺品を保存しているロックフェラー・アーカイブ・センターを取材に訪れた。そうした、米国での取材旅行で得た情報も含めて、ご紹介したい。

1.ロックフェラーの築いた富の大きさ

1)富豪番付

JDRがどれほどの富豪であったのか、最新の資料を探した。その結果、「ニューヨーク・タイムス」(2007年7月15日)のウェブサイトで、アメリカの富豪番付を発見。これには、死亡時の資産を米国のGDP比率から現在価値に換算して算出したものを使用している(ただし、ビル・ゲイツは、故人ではないので、2006年の推計を使用)。

また、慈善事業への寄付も可能な限り、資産に含めている。これを見ると、多くの歴史的な富豪が活躍したのは、19世紀後半の “Gilded Age”(金ぴか時代)、つまりアメリカが一農業国から世界最大の工業国へと発展していった時代と一致する。現代資本主義社会が生まれた時代と言ってもよい。

資産額(10億ドル)

1      ジョンD・ロックフェラー    (石油)        192

2      コーネリアス・バンダビルト  (海運・鉄道)   143

3      ジョン・アスター            (不動産)         116

4      ステファン・ジラード        (海運・銀行)     83

5      ビル・ゲイツ                (PCソフト)     82

6      アンドルー・カーネギー      (鉄鋼)           75

この表で示したように、ロックフェラーは、アメリカの歴史において、圧倒的な大きさの富を築き上げた。1ドル=100円で換算すると、ロックフェラーの資産は、現在価値で19兆2千億円ということになる。もっとも、亡くなる時には、そのほとんどを、慈善事業に寄付をしていたが。

齋藤 英雄


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