ニューヨークとホワイトハウスのクリスマス

米国ワシントンDCの郊外に住んでいる時、感じたことを気の向くまま書き綴っておりました。以下は、クリスマスに関する経験をまとめたものです。1996年の状況を書いたものですので、現在とは異なる点も多々あろうかと思いますが。

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日本人はお祭り好きの国民と言われている。アメリカ人も、日本人に負けず劣らずお祭り好きである。その中でも、クリスマスは、もっとも重要な行事である。

ところで、クリスマスというとキリストが生誕した日と思っていたが、USA Todayで意外な記事を見かけた。キリストが生誕した日は、実はキリスト教の初期には不明だったそうである。12月25日は以前からお祭りがあり(冬を死、春を生とすれば、冬至のころは新しい生の始まりといえるので)、この日を4世紀のローマ法王がキリストの誕生日と定めたそうである。

さて、アメリカでのクリスマスの経験を綴ってみよう。

1)クリスマスツリー

12月に入ると、あちこちにクリスマスツリーやリースが、姿を現す。近所では、3割くらいの家が家の周りに電球をつけ、行き交う人の目を和ませてくれる。中には、パチンコ屋とまでは行かないものの、かなり派手な電飾をしている家もある。

さて、家で飾るツリーは大きく人工と天然に分けられる。人工のツリーの利点はもちろん毎年使える事。天然のものは、木の香りが味わえるというメリットがある。日本では味わえない経験をしようということで、我々は天然物でいくことにした。天然物はあちこちで売っている。看板には、“Fresh Christmas Tree”と書いてあったりして、クリスマスツリーにもフレッシュと言う言葉を使うのかと興味をそそられる。このフレッシュにこだわり、実際に生えている木を切りに行く人もいる。我々は、近所のファームパークに買いに出かけた。木の種類によって値段がかなり違う。あまり、香りのしない木は安い。われわれは、2メートル弱あるNorth Carolina Fraser Firという香りのする木を購入した。56ドルという価格で、これは同程度の人工の木の半額程度である。この木をどうやって運ぶのかと思っていると、機械に入れ木の周りにネットを被せ、木の枝をたたんだ上で、車の上に縛り付けてくれる。(そうでもしてくれなければ、誰も買わないだろう)家に帰り、ネットを切り、生木用のツリースタンドに立てると、天然物のクリスマスツリーの出来上がりとなる。あとは、オーナメントを付けるだけである。オーナメントは、日本に比べればかなり安い。とくに、電球は100球ついたものが、わずか2.5ドルである。ただし凝ったものだと、一つのオーナメントが数十ドルもする。日本より安いとは言え、2メートルのツリーを飾るには、かなりの量のオーナメントが必要だ。結局、ツリーの2倍以上のコストがかかってしまった。こちらでは、毎年少しずつ買い足していくのが普通のやり方のようだ。「これは、あの年に買ったもの」と想い出になるように。

2)クリスマスカード

クリスマスカードの選択の幅は広い。値段も様々。もっとも安いものは、封筒もついて50枚で約5ドルというのがあった。一枚10円強である。不思議なことに一番高いのは、何も印刷していないインクジェットプリンター用のカードであった。私は、表紙だけ印刷し、中身は自分で作ることにした。せっかく出すのだから、最初から印刷したものに、自分のサインをするだけで出すのでは味気ないと感じたからである。

アメリカでは近年クリスマスカードを、減らす方向にある。昔は親戚はもちろんのこと、会社の同僚も含め手当たり次第に出していたようだが、いまでは親しい人だけに送るというのが主流らしい。会社でも秘書の数が減っているので、秘書に頼んで関係先に送るというのができなくなっている。

また、文面にMerry Christmasと書いたものは、少なくなっている。たいていはSeasons GreetingsとかHappy Holidaysになっている。これは、受け取る相手がキリスト教徒とは限らないためである。こうした相手への思いやりというか、揚げ足を取られないための言葉使いへの配慮は、Political Correctness(PC)と言われ、過去2-3年相当話題になった。特に差別用語への気配りは異常な程である。たとえば、労働力はmanpowerではなく、workforceと言うのが普通になった。(manpowerというと男性のみを指すとの見方もでき、性差別になりかねないからであろう。)

 

3)ショッピング

クリスマスはまた、ショッピングシーズンでもある。新聞の広告もすさまじいが、また、混み方も日本並にすごい。しかし、実は店がもっとも混雑するのは、クリスマスの翌日、つまり12月26日である。この日から、バーゲンが始まる為である。

25日はほとんどの店が休む。そして、このクリスマス明けのバーゲンの準備に入る.翌26日は早いデパートでは、何と午前7時に店を開ける。新聞広告は二日前から始まり、人々に準備を促す。26日は会社の休日と言うこともあり、われわれも、遅ればせながら9時頃とあるショッピングモールに出かけた。到着するとすでに、それまでの最終処分価格の半額になったおもちゃを求める人で、ごった返していた。あまりの安さ(例えば、子供用の学習コンピュータが25ドル)に、予想外の出費をしてしまった。

混雑のもう一つの理由は、もらったプレゼントを返品又は、交換する人が殺到するためだ。「これ前から欲しかったものなの」と言って受け取りながら、クリスマス明けには返品に行くとは、ちょっと興ざめであるが、これが人間の姿かとも思う。アメリカの店の特色として、簡単に返品に応じるということがあげられる。しかし、なかにはこれを悪用する人もいるそうだ。高価なドレスを買い、パーティーに出たあと、返品に来ると言う女性もいる。気に入らないと言いながら、香水のにおいがついて明らかに着用したドレスを返しに来るとは、大した度胸である。さすがに店側もこれではたまらないということで、タグを外したドレスの返品には応じないという対抗策を取っているとの事である。

 

4)ニューヨークのクリスマス

ニューヨークのクリスマスは、華やかだというので、家族そろって車で出かけることにした。2度目との事もあり、かなり精神的にはゆとりある。予定通り、4時間半でマンハッタンに到着。あちこちクリスマスのイルミネーションが美しい。

有名なロックフエラーセンターのツリーを見に行くと、大変な人出で驚いた。また、5番街の混雑もすさまじい。この時期ニューヨークのホテルの稼働率は90%以上で、世界中から観光客が集まっているという感じである。確かにツリーはとても大きかったが、華やかさという面では、東京のクリスマスもひけをとらないのではないかと思う。表参道の電飾の規模は、アメリカ人でも驚くだろう。

本当に感激したのは、ラジオシティーのショーの方だった。あの有名なロケッターズのラインダンスも出てくる。身長のそろった40人の一糸乱れぬ脚裁きは、なかなかのものである。クリスマスとあって、子供の姿も多い。歌、踊り、スケート、バレエ、どれをとっても世界トップレベルのものである(と思われる)。一時間半ノンストップのショーは、全く人を飽きさせない素晴らしい内容であった。もし、クリスマスにニューヨークに行くなら、これを見ない手はない。

(最近のショーの様子は、以下をご覧ください)

https://www.youtube.com/watch?v=mkCs1vGxaZU

 

5)ワシントンのクリスマス

ワシントンにも有名なツリーはある(と言うことを日本から送られてきたニュース番組のビデオで知った)。ホワイトハウスの前のクリスマスツリーである。これも、ロックフエラーセンターのツリーと同規模である。違うのは、まわりに高層ビルがないこと。そのかわりに、ホワイトハウスのツリーを挟んだ反対側には、ワシントンモニュメントが宙を指している。巨大なツリーの周りには、全米各州のプレートと小さなツリーが飾られている。

ホワイトハウスでは、当然クリスマスパーティーが開催される。残念ながら、我々の所には、クリントン大統領からの招待状は来なかった。代わりに、インターネットでホワイトハウスのホームページを呼び出し、大統領の出したクリスマスカードを受けとることにした。ホワイトハウスでは、12月26日-28日まで毎晩キャンドルツアーがあるとの記事を新聞で見かけ、出かけてみた。小さな記事であったので、たいして人は集まるまいと思っていたが、行ってみると長蛇の列。行列は、ホワイトハウスと、その隣のオールドエグゼクテイブビルテイングの2ブロックを4分の3周するくらいの長さがある。1時間ほど寒空の中を並んだが、入れるまでにはさらに2時間以上待たなければならないようであったし、二女は足が凍傷になりそうだというので、出直すことにした。

28日に、もう一度トライ。この日が、ホワイトハウスのクリスマスデコレーションを見る最後のチャンスである。一番乗りをするつもりで、開門の2時間前に到着した。しかし、この時すでに100メートルほどの列ができている。先頭の人に何時に来たのか聞くと、1時半とのこと。もう1時間半も並んでいるわけである。さて、地べたに座り込み、インターネットから取り出したホワイトハウス関連の資料を読んでいるうち、開門の時間となった。手荷物検査を済ませ、南東の入り口から入る。クリスマスのデコレーションの美しさには目を見張るものがある。ツリーにかかるオーナメントは、手作りのものばかりだ。そして、その数が途方もなく多い。オーバーに表現すれば、オーナメントでツリーが隠れてしまうほどだ。「ああ、やっぱり来てよかった」と感じる。ツリーは、一部屋だけではなく、各部屋に置かれている。いずれも高さが6メートルはあろうという巨大なものだ。特にイーストルームには、6本のツリーが置かれ、その横では、クリスマスキャロルの合唱が行われている。また、ブルールームのツリーは特に巨大で、部屋全体がツリーに占領されているかのようである。この木はthe National Christmas Tree Association(こういう組織があるとはそれまで知らなかった)の最優秀クリ スマスツリー栽培者から大統領夫妻に贈られたものだそうだ。ツリーもさることながら、各部屋に置かれた家具や肖像画は、それぞれ由緒あるものである。しかし、それらの由来を知らなければ、ヨーロッパの屋敷によくありそうなもので、そのまま通り過ぎてしまうかもしれない。単に部屋の豪華さを競うのであれば、ベルサイユ宮殿に軍配があがるだろう。しかし、現実に使用している部屋を一部なりとも一般の人に見せるところが、開放的なアメリカらしい。

これまで、ホワイトハウスの中に入ろうとしたことが何度かあったが、ようやく4度目にして実現することができた。約30分の見学を終え外に出ると、ワシントンモニュメントがライトに照らされて美しい。キャンドルツアーを待つ人々の列は、ホワイトハウスから南へ伸び、コンスティテューションアベニューに達し、そこから折り返して、またホワイトハウスに近づいていた。そういえば、後ろで並んでいた人が、以前8時間並んだという話をしていた。われわれは、今回が最後のチャンスと考えチャレンジしたが、ここにずっと住み続けていたならば、一生参加する事はなかったであろう。

(今年のホワイトハウスのクリスマスデコレーションは以下をご覧ください)

https://www.whitehouse.gov/holidays-2021/

 

6)クリスマスからお正月へ

クリスマスが終わると我々日本人は、「さあ、これからがメインイベント!」という感じで、お正月の準備に入る。実際、家内も26日にはクリスマスツリーの片づけに着手した。ところが、まわりの家ではいっこうにクリスマスツリーを片づけない。そのまま、正月へ突入だ。

会社は、クリスマスの翌々日から平常通りの勤務となる。もっとも、元旦まで続けて休む人も多く、会社にいても今一つ力が入らない。31日大晦日は、どこかのパーティーに入り午前0時のカウントダウンを迎え、翌日は二日酔いで寝ているのが、正しい新年の迎え方の様である。私も正しいお正月を迎えるべく、日本料理店で開かれたジャズコンサートに同じ米国企業に勤務している日本人の方と行ってみたが、あまりに盛り上がりに欠け、かつ日本料理とジャズの組み合わせがしっくり行かず早々に帰ってきた。

さて、アメリカで新年を迎えるのにもっとも有名なところと言えば、ニューヨークのタイムズスクウェアであろう。テレビをつけると、猛烈な数の人がカウントダウンを心待ちにしている。先日泊まったホテルもテレビに映ったりして、今では親しみを感じる光景である。何でもこの周辺に集まった人の数は、何と50万人!早い人は午後4時頃からずーつと寒風の中待っているそうだ。しかも、この日のニューヨークは過去25年で最も寒い大晦日とのこと。この寒さをこらえ、8時間も立って待つとは、大した根性である。ホワイトハウスのクリスマスデコレーションと言い、タイムズスクウェアのカウントダウンと言い、有名な場所に行くには相当な覚悟が必要ということだろう。

以上

 

齋藤英雄


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