まず右の写真をご覧ください。古いアルバムで見つけたものですが、1995年のステンドグラスのアトリエで撮影したものです。
アトリエでは新しい作品が完成するとシャンパンを抜いてお祝いをするのが慣習となっていました。作品の制作者が招待するので正確には内祝い、或いは新作の披露宴という事でしょうか。この日も当日の出席者10名くらいが集合したと思います。しかし作品はなく写真の二人からのご招待だったのです。

「暫くの間でしたが息子がお世話になりました。この度中学を卒業、新しい世界に旅立つことになりました。将来の夢パティシエを目指して南仏の専門店に勉強に行くことになりました。」非常に仲の良い親子でした。子供の方はちょっとした小物を作っていましたが、それなりの作品で、親子の会話も作品に関するもので、時に子供が父親にアイデアを話すようなこともありました。それにしてもこの年で親元を離れ、しかもとても日帰りも出来ない遠方にと思ったものでした。

この留学について色々話が出たのですが一言で言えば丁稚奉公(使用禁止用語?)で、この表現が一番ぴったりだと思います。彼らは盛んにメイトル(Maitreフランス語でマイスターを意味する)と言う言葉を使っていましたが、そんな制度がフランスにもあったのか!と言うのが正直な印象です。三食付きで住み込み、しかも無給だと言います。いや逆に無償で技術を貰うのだと言う印象すら伺えます。この親子はお父さんが学校の先生らしい。子供の成績や希望を聞いての決断だろうと思います。日本と比較して隔世の思いです。

二人が帰ったあとマイスターの話しを聞くことが出来ました。ドイツではしっかりとした制度になっている様子。しかしこの制度が出来るまでは職人と師弟の間の不和があり、職人が組合を作って共同で対処、これに対し弟子の方はある程度腕が出来た段階で職人(師匠)から離れ、時には流浪の旅に出て自分の腕を確かめ、時には新しい師匠を見つけ更に上を目指す、或いは新しい独り立ちの環境を見つける。しっかり確かめたわけではないが師匠を継ぐとか、暖簾分けのような環境は全くないという事。流浪の旅のあとしっかり自分の腕を磨き元の師匠の隣に店を開き、強引に自分で暖簾を勝ち取った例もあるとか。かくして専門店街が出来、お互いに切磋琢磨して繁盛したというハッピーエンドの話も。

以来約25年、坊やも今や40歳前後、フランスのどこかで、いやパリの一角で一流のパティシエとして頑張っていることと信じます。

この間ドイツのマイスター制度も進化して我が国でもしっかり知られる制度になっていることはご存知の通り。
フランスにも呼び方は異なるがマイスターに近い制度があります。上級技術免許(通称BTS)で、高等教育をベースとした国家資格でちょっとドイツの制度とは異なるようです。フランスで習ったステンドグラスの先生も国立高等工芸美術学校(通称 Ecole des Metiers)のステンドグラス科の卒業と聞いています。

ところで皆さん、「川崎マイスター」と言うのをご存知でしょうか。私の知人の一人も川崎マイスターなのですが、どういうことでこの称号を貰われたのかご本人に伺うのを躊躇しています。

 

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