フランスあれこれ76 フランス人の表と裏=ファッション

私のパリ駐在時代は正にバブルの時代、多くの日本からの観光客はフランスの観光よりもファッション商品、例えばヴィトンやカルチエのバッグなどに興味があったように思います。逆にパリジェンヌは全く興味を持たなかったというかむしろ反逆精神を持っていたような印象を受けました。ある時パリコレのファッションショーに招待された時誰か一緒に行きたい人は?と事務所の女性に声を掛けたのですが誰一人として反応はありません。そこでどうしてかを訪ねたのですが、若い女性の趣味にそぐわないし、興味を持つだけで友達を無くすだろう。要は総スカンを受けているという事らしい。お金があってもダメかと聞いたら、むしろバカンスの為の貯金に回したいと言う反応でした。

この話をフランスの友人(男性)にしたところ、その傾向は男も同じだと言います。超モダンな服装の男にはガールフレンドは出来ない、ましてや若い男にはとんでもない!ブランドなんて興味がないとのご宣託。それではパリコレは何のためかと言うとデザイナーのネームバリューと関係するプレタポルテの広報だとのこと。要は高級ブランドを求めるのは一部のお金持、しかも年寄りの気晴らしに過ぎないと。

この話どこまで本当かは私には判断できません。しかしファッションはともかく山高帽とステッキを持って紳士然としていたり、高価な服装とアクセサリーで身だしなみの貴婦人は皆それなりに年齢を重ねた人だったと思います。要は高級ファッションは一部のお金持ちのもので、庶民一般は見るのも好まないということかもしれません。

蛇足ですが当時活躍していたデザイナーはピエール・カルダン、イヴ・サンローラン、ニナリッチ、日本人では三宅一生、森英恵、それに私と同郷(大阪府岸和田市)のコシノ姉妹(ヒロコとジュンコ)などです。

ある日夕食には早い時間にシャンデリゼの一角にある“キャビアハウス”に入りました。我々二人の他に老齢の夫人が一人カウンターに座っていました。ボーイさんと何か話しているようでしたがやがて店を出ました。後を追って私がお勘定の時何となく先ほどのお客さんと口にした途端、店員さんから「あれは“マダム・ロシルド”」と即答されました。即ちロスチャイルド夫人という事です。黒一色の何の見栄えもしない服装だったと思います。ひょっとしたらパリの踊り子から一大財閥夫人になったという伝説の貴婦人だったのかも?

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