オランダ点描(6)ニシン

現在、日本ではニシンはそれほど一般的な魚ではなくなったようです。京都の身欠きニシンをのせたニシン蕎麦などは有名ですが。ただ、その卵である数の子は今も昔も正月には欠かすことのできないものです。しかし、ここオランダでは少し事情が違います。なんと、数の子は見向きもされません。魚ですから身を食べることには変わりはありませんが、その食べ方が少し変わって(?)います。もちろん、我々日本人の目から見て変わっているということであって、よく考えてみると我々が最も好きな魚の食べ方にも似ていなくもありません。

オランダ流ニシンの食べ方。
6月半ば過ぎ、解禁日(正式に決められているようですが、私はそこまで知りません)になると、一斉に新ニシンが街角のあちこちの屋台で売られます。実は解禁日の前に女王陛下に献上されることになっており、庶民はその後というわけです。屋台で調理する人は、まずニシンの頭を刎ね、はらわたを出し、中骨を取って、身を開き、尻尾だけ残し、皮をむいて、ササっと塩水で洗うだけでおしまい。その手さばきの速いこと。注文すると、たいてい2匹をプラ皿に並べ、玉ねぎのみじん切りをぱらぱらと振りかけ、ハイどうぞ。調味料?そんなの無し。この玉ねぎと塩水で洗った後の微かな塩気のみ。屋台の周りで食べている人を見ると、どんなにめかし込んだ御婦人でもおもむろに天を仰ぎ大きな口を開けて、片手にニシンのしっぽをつかみ高く持ち上げ、そうっと口の中に落とし込みます。ほぼふた口でペロリ。その他の食べ方としては、コッペパンを開き中に一匹はさみサンドイッチとして。これがオランダ流ニシンの食べ方。

日本人は刺身を食べるわりに、このオランダ流があまり得意ではないようで、醤油だワサビだといいますが、何にもなしでも結構いけますよ。一度機会があればお試しを。きっと、オランダ人が「Prima!(最高!)」と言って親指をたててウィンクしてくれること間違いなし。食べた後、手が魚臭くなるのには困りますが。
日本にいた時、よく紹介されていたニシンの酢漬け・塩漬けというのは間違い。ただの生ニシンです。番組を作る人が実際に食べてない事がまるわかりです。

また、この時期になると、それぞれの家庭や企業などでもHaaring Party(ニシンパーティー)というのがよく開かれます。その時飲む酒は決まってオランダのSoul drink ともいうべきJENEVER(発音が面倒なので、ジュネーバーと書きますが)です。いつかこのジュネーバーについてはお話しする機会もあるでしょう。

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