追憶のオランダ(15)アントン・ピーク

皆さん、アントン・ピーク(Anton Pieck)という人を御存知でしょうか?オランダの画家で、本の挿絵などもたくさん描いたグラフィックアーティストでもあります。おとぎ話に出てくるような独特の画風をもった人です。
私が彼の絵と出合ったのはもう30年以上も前のこと、出張でオランダを訪ねた時、小さなデコパージュというかシャドウボックスに目が留まったのが最初でした。小さな女の子がピアノに向かっている後姿です(写真左)。非常に優しい線でメルヘンチックに描かれています。私は誰がその作品を作ったのか知りたくて、店の人に「誰の作品ですか?」と尋ねたら、「アントン・ピークよ。」という答え。もちろん聞いたことのない名前でした。また、シャドウボックスというものにも知識がなく、その時はそれで分かったつもりでいたのです。アントン・ピークという人がこのシャドウボックスの製作者なのかと。

オランダ滞在中、オランダ語の本は殆ど読めないのに本屋にだけはよく通っていました。観光ガイドの本、写真集、歴史物でも写真や図解の多いものは少しくらい言葉が分からなくても非常に参考になります。そんな時、見たことのあるタッチの絵が表紙になっている立派な装丁の本を見つけました(写真右)。パラパラとページをめくると、何とあのピアノを弾く女の子の絵があるのです。
描いた人の名前を見ると、Anton Pieck。そうか、この人が描いた絵だったんだ。それであの時、店の人はアントン・ピークと答えたのだということが何年も後にやっとわかったのです。彼の絵は、100年くらい前の昔のオランダの風俗画として描かれているのが多く、どれもメルヘンチックで、何とはなしに郷愁をそそられる感じです。シャドウボックス作品を作る人は、このアントン・ピークの絵に魅せられて彼の原画をもとに独自に立体的に組み立てるわけですが、中にはそれを商売にしている人もいるようです。店で初めて出会ったものも、おそらくそんな作品の一つだったのかもしれません。じつは、その時、娘への土産に買って帰り、今も我家の壁に掛けられています。ということは、この作品は、2度オランダと日本の間を行き来しているのです。

オランダの北部にHattemという小さい町があります。そこにはアントン・ピークの名前の付いた美術館があり、彼の原画などをたくさん収蔵しています。ある時その情報を聞き、是非とも見たいと女房ともども車を飛ばしたこともありました。女房もいつのころからか、友人と一緒にシャドウボックスを始め、やはりアントン・ピークの作品をたくさん作っています。ある意味では、アントン・ピークと言えばシャドウボックス、シャドウボックスと言えばアントン・ピークという感じになっていました。今でも、季節ごとに壁に作品をかけ替えますが、いろいろある中で12月のシント・ニコラス祭のものと、街角の駄菓子屋の前で子供たちが見入っている絵が何とも言えず微笑ましく、気に入っています。

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