追憶のオランダ(39)ストリッペン・カート

ストリッペン・カート(Strippen Kaart)、これはオランダ語ですが、英語で書けばストリップ・カード(Strip Card)。なにやら怪しげに聞こえるかもしれませんが、変な想像はしないで下さい。これは、オランダ全国で使える公共交通機関用の乗車切符の名称です。バス・トラム・地下鉄・鉄道すべてでこのカードが使えます。しかし、このシステムは2011年に廃止となり、現在はストリッペン・カートに代わる新しいシステムが導入されている由。したがって、ここからは、ストリッペンカートにまつわる「むかし話」をすることになります。

この切符は、細長い紙で、購入金額に応じて何段かのコマに区切られています。そうです、4コマ漫画というのがありますが、あれをStrip Comicと言いますね。そのストリップです。あらかじめ各都市でゾーン分けされていて、どのゾーンからどのゾーンへ移動するのかによって、必要なコマ数(これが乗車料金となる)が決められています。そして、乗車の際に、行先までの必要なコマ数分のところでカードを折り曲げて、乗り物の中や駅の改札などに設置されている黄色い自動スタンプ・マシーンに挿入して、ガチャンと乗車したゾーン番号・日時を印字します。

例えば、同一ゾーンの中での移動なら2コマ必要、隣のゾーンへの移動なら3コマ必要、さらに遠方なら何コマとか決められています。また、いろいろな路線を乗り換え、乗り継ぐことも自由です。何度乗り換えても構いません。さらに、複雑に思えるのが、移動の距離が長くなれば、利用する際の制限時間が距離に応じて長く設定されています。その時間内であれば、多少の道草なども平気です。

日本では、例えばJRで中野島駅から隣の登戸駅に用事があって往復する場合、往復の運賃がかかりますが、これは当然です。しかし、オランダのこのストリッペン・カートは、3つのゾーン間の移動(その距離は片道2-3kmはあります)の場合など、1時間以内であれば、行きにスタンプを押しておけば、帰りはそのままスタンプの必要はなく、用事を済ませて帰ってくることができます。つまり、ストリッペン・カート流に置きなおせば、登戸で30分くらい何か用事をすることがあっても出発から1時間内で中野島まで帰ることができれば、中野島で買った140円の切符で往復可能なのです。どうです、面白いシステムでしょう?

このストリッペン・カートは、大きな駅とかキオスクなどで売っています。もし、事前に買っていないと、バスやトラムなどには車掌は乗っていませんので運転手のいるドアから乗って、いちいち少し割高の一回分の切符を買わなければなりません。これは面倒だし、時間が余計にかかり他の乗客に迷惑にもなる。

このシステムは無賃乗車あるいはコマを少なくするなどのズルをしようとすれば、いくらでもできそうです。ただし、時々、トラムなどの停留所で、すべてのドアから制服を着た人たちがドドッと乗り込んできて、乗客すべてのカードを検札することがあります。その時、正しくスタンプが印字されていなければ、その何倍かの罰金を払わされることになります。この一斉検札はそれ程の頻度ではありませんが、運悪く(?)無賃乗車が見つかって罰金を払わされている人を見かけたことがあります。
無賃乗車かどうかの確認はできませんが、あまり風体のよくない奴がさっと乗ってきて、乗り換えでもないのにカードに印字もせず、2-3駅でスッと降りてしまう、こんな光景はよく目にはしました。人を疑うのはよくない事とは思いながら、どうしても無賃乗車のことが気になったことを思い出しました。でも、近くまで来て、さっさと用事を済ませて帰っていく人だったのかもしれません。それはそれで、あり得ることなのです。

 


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