1999年に、自ら企画、実行したイギリス自由旅行記「コッツウォルズの歩き方」を掲載しましたが、実はこの旅行についてのいくつかのエピソードや感想があります。随分と昔の話で恐縮ですが、書きためたものをいくつか紹介しています。
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イギリスを旅していると、あちこちで「ナショナル・トラスト」という言葉にぶつかる。貴重な自然や歴史的建造物を保護する団体で、公的機関ではなく民間組織によって展開されているとのことである。正式名称は「The National Trust for Places of Historic Interest or Natural Beauty」である。弁護士のハンター、婦人運動家のヒル、牧師のローンスリーの3人が発起人となって1895年に創設された。

この運動のきっかけとなったのは、18世紀後半から世界にさきがけて起きた産業革命で、その結果都市への人口集中と周辺の自然破壊、過疎地の荒廃を招いた。この現実から自然や歴史的名勝を、民間からの募金や寄贈などによって保存管理し、公開していこうというのがナショナル・トラストの基本姿勢である。

現在の会員は、1999年現在、20年ほど前の8倍、軽く200万人を超えているが、この急激な拡大の最大の理由は、法律によって特権が認められていることである。国はこの運動には一切の経済的援助をしないかわりに特権をあたえた。

内容は、NTは保存の対象となる資産を譲渡不能と宣言する権利を持つというもので、これによりNTは寄贈者にその永久保存を確約できるようになった。また、寄贈などに対する税制上の優遇措置も定められた。

NT運動の広がりは節税対策と思えるかもしれないが、むしろ国土と文化遺産を未来に伝えたいという思いがイギリス人には強くある、と考えるべきであろう。

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