私の好きな仏像 (1)

私が仏像に関心を持つ契機はこんな事からである。

今から35年位前、学生時代の友人と年2~3回飲み会をやっていた。ある時K君が京都の祇園に知っているお茶屋があるので舞妓さんを呼んで…という事になり京都観光旅行が始まった。最初は9名であったが、今では参加3名に減っている。

観光旅行は定石通り仏像の拝観から始まったが、どの仏像も同じように見え、国宝とか重文と言っても特別感動を得るものではなかった。

たまたま川崎市の老人大学で“仏像鑑賞”の講座がある事を知り、週1回2時間12回の講座を受ける事になった。講師は多摩美術大学の斉藤教授で、釈迦の生涯とガンダーラ美術に始まり、体系的に鑑賞の手引きを教えていただいた。

それと同時に得たものは、すべからく基礎的な知識を持って鑑賞するのとそうでないものの差は歴然たる差がある事を実感した。

それ以降も京都方面の旅は続くが、仏像に対するビヘイビアーは変化していった。紹介する仏像は京都、奈良、滋賀の三県にまたがる。それぞれの文化・県民性が微妙に異なる。私の見解であることをおことわりしてまとめてみる。
【京都】何といっても1000年余日本の主都であった自信に充ちている。神社仏閣・祭り・茶の湯・懐石料理・西陣の織物・花街がリンクし合い独特の文化を形成したと見る。
古い町屋のご主人いわく「うちは先の戦争で全部焼かれ何も残っていません」につきる。先の戦争とは応仁の乱の事である。
【奈良】仏教を主骨とした律令国家を築いた南都六宗の地元。奥深い富の蓄積を感じる。「今では小さな国になってしまったが、私たちは幸福(しあわせ)とは何かを知っている」と言ったローマの老人の言葉を想い出す。都(みやこ)の発展を静かに見ているそんな感じ。
【滋賀】京都・奈良とは争わない。儲ける事にはすばやい。琵琶湖の海賊・近江商人発祥の地。成る程と思う。琵琶湖の恵みで地域全体が豊かである。

(次回以降、2回に分けて次の仏像を紹介する予定)

1.法界寺 阿弥陀如来坐像(国宝)
2.東寺(教王護国寺)講堂の二十一尊像
3.六波羅密寺の空也上人立像(重文)
4.渡岸寺(向源寺)十一面観音立像(国宝)
5.中宮寺 弥勒菩薩半跏思惟像

井口睦康

    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です