十男63歳 十人の子を養う親はあれども一人の親を養う子はまれなり
いわゆる名言、金言と言われる言葉をボクは日記や手帳によくメモるのだが、いつの日か忘れ去る。身の丈に合わないのか心動く器量がないのか。そんなボクでも一つ忘れられない言葉がある。
10人兄弟の7人を喪って六男、九男、十男のボク計3人になった。「残った3兄弟 毎年一回は会って話をしないか」と六男が提案した。それぞれの自宅で会うのはたとえ兄弟でも気遣いが生じるので、旅館・ホテルなどを利用して連れ合い同伴6人で会うことになった。
2013年秋 初会合は山口市のかんぽの宿。3組6人が立ち寄った常栄寺というお寺に雪舟庭園があり、そこの石碑に刻まれた言葉=写真=。
「十人の子を養う親はあれども一人の親を養う子はまれなり 佛典」
「わし(私)らの親のことのようだなぁ」と一同顔を見合わせた。碑の前で親の苦労した出来事を改めてお互いが思い起こし、昔話が弾んだ。だがボクだけ後半の「一人の親を養う子……」に考え込んだ。ボクは「まれ」にさえなっていない。
写真=島根県益田市の旅館「荒磯館」で盛り上がる3兄弟(左から九男、ボク、六男=2015年6月)