フランスあれこれ90 パリの石畳
石畳と言えばわが国では神社仏閣の入り口辺りに見かけるばかりですが、フランスでは昔に比べると減ったものの今もパリの街でよく見かけます。パリでも最近は主要な自動車道路はアスファルト舗装になっていますが、昔はほぼ全てが石畳でした。
今から50年以上前のある日、私がびっくり仰天した光景です。フォルクスワーゲン(通称ビートル)が先頭を切って走っていたのですが、ちょっとしたにわか雨に遭遇しました。丁度信号が黄色に変わった途端、石畳がまだ濡れ切っていない段階でこの車がスリップ、しかも180度の半回転で後ろ向きに私に向かう形で!停車しました。幸い何の事故もなかったのですが、私はすぐには身動きが取れず茫然としていたのです。ご近所の車から人が出てうまい具合に交通整理、そしてフォルクスワーゲンは何事もなかったようにが出掛けて行きました。
申し上げたいことはこの石畳がいかに滑りやすいか、そしてなぜフォルクスワーゲンだけがスリップしたか? 後で知ったのですがビートルのエンジンは後方にあり前はスペアタイヤ一本しか入っていない。車の重量が前後で大きく違っていたという事。少しでもハンドルを切るとか、石畳のように均一でない道路で急ブレーキをかけるとこのようなトラブルが発生します。パリのドライバーは良く知っていることだったようです。
(以下余談です)1964年、東京オリンピックの年にパリに赴任しました。事務所はコンコルド広場の近く、そしてワンルームの借家はオペラ座の裏。週末には地図を片手にあちらこちらを歩き回り、街の感覚を知ったところで車の算段に取り掛かりました。車は郊外に散在する得意先回りに欠かす事は出来ません。近くの中古車の販売店でいろいろ相談の結果、先ず免許の取得(長期ビザの場合国際免許では通用しない。現地並みの免許が必要)、近くの運転教習所(と言っても個人の事務所)で2~3度の実務練習、これで交通ルールを知ったうえで公式試験に挑みます。(とはいえ試験官が出張して来て実務と口頭試問で即時の判定)一週間で永久免許を入手できます。昨年私は日本の免許を返上、しかしフランス免許は今も有効です。
(もう一つ余談です)この原稿を書いていて思い出しました。オルセー美術館のことです。上のビックリ騒動の後20年位あとのことです。コンコルド広場からセーヌ川を渡ったあたりで大規模な舗装工事が行われていました。全ての舗石を取り除き鉄筋を縦横に張り巡らせてコンクリート、それからアスファルト舗装と言う手順でした。大工事で私の目を引いたのですが、理由は地下に鉄道(トンネル)が走っているという事でした。オルセー美術館との関係は次回の投稿をお楽しみにと申し上げます。