詩~光と球体

光と球体

ものの影を重ねて
ゆがんだ球体
空洞が
ぽってりと座っている
忘れられている

もつれて躍る光は
球面に漉され
過去はひとつの和音にこごる
ひとすじ溶け出した雫か
生まれ出た力は
われ知らずあふれ
空洞のなかを駆ける

半透明の層
厚い膜と思ったものが
脆くよじれ
ひび割れ
空洞は侵犯される

響き合う雫の音を潜ませて
淡い闇は
くるりと捲られ
侵入する光に融けて行く
空洞は
底の方から
めざましいアメジスト

荻悦子(おぎ・えつこ)
1948年、新宮市熊野川町生まれ。東京女子大学文理学部史学科卒業。お茶の水女子大学大学院人文科学研究科修士課程修了。作品集に『時の娘』(七月堂/1983年)、『前夜祭』(林道舎/1986年)、『迷彩』(花神社/1990年)、『流体』(思潮社/1997年)、『影と水音』(思潮社/2012年)、横浜詩人会賞選考委員(2012年、16年)、現在、日本現代詩人会、日本詩人クラブ、横浜詩人会会員。三田文学会会員。神奈川県在住。
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