追憶のオランダ (1)実質本位の国

皆さん、再びオランダの話題で恐縮です。

私がオランダ勤務を終えて帰国したのは1998年ですから、もう20年以上昔のことになります。オランダという国は非常に保守的な面もあると同時に、結構大胆に新しいものにチャレンジする精神も持ち合わせており、しばらく見ぬ間に街そのものの姿やそれを支えるシステムやインフラなどが様変わりしていることがあります。おそらく、私など今オランダに行くと、もう浦島太郎状態かもしれません。「10年ひと昔」と言いますから、ふた昔前の昔話になるかもしれませんが、しばらくお付き合いください。

 

1.実質本位の国

オランダの特徴を一言で言えば・・・。
私なら「実質本位の国」と言います。大多数の国では今や非合法になってしまったこと(昔はどこの国も合法だったこと)が、いまだに合法のままで通っていることもいろいろあるし、また反対に昔はどこの国も非合法だったことをいち早く合法化していることもあります。ということで、一見、融通無碍、平たく言えば「何でもありの国」のように見えなくもありません。まず一番に思い浮かぶのは、ドラッグ・公娼制度。さらに早々と同性婚・安楽死などが合法化されているのはオランダならでは、ということになるでしょう。

これらは、どれをとっても賛否両論のある非常に難しい問題でもあり、単純にああだこうだと決めつけられない問題でもあると思います。その意味でオランダ人の考え方が実質本位であり、しかも非常に柔軟(見方によっては柔軟過ぎるとも言える)であることの証拠でもあります。一体なぜオランダは他の国々から非難を浴びながらもそれらを変えようとしないのか。それには彼らに一理も二理もありそうです。その点は、観念的、情緒的な考えに基づいて議論し合っても、お互いなかなか理解し合えないかもしれませんが。

この実質本位というのは、オランダ人の衣食住の普段の日常生活にもよく表れています。
「衣」は、まず、あまり飾りません。一般に地味ですが、意外に色使いなど原色を結構多用することが多く、どちらかと言えば奇抜な感じさえします。でも、衣服は、基本的に暑さ寒さを調節するものという点に徹していて、実質本位と言えるでしょう。
「食」も、然り。とりたてて美食を追及するとういうことは少ないように思います。一日のうちの食事でも暖かいものを食べるのは夕食だけ。年中同じものを食べても特に不平はない様子。日本人のように、今日は和食、明日は中華だ、それともイタリアンだというように外国風の料理を食べたがることもあまりないようです。これも、食は体を維持するに必要なものを食べればよいという、これまた実質本位。
「住」は、持ち家だろうが借家であろうが、自分たちが快適に住むためには、自分流に好き勝手に手を加え整えるのが一般的。床・壁・家具、さらには電気・水回り等、まさにDIYの見本のような生活。やはり、これも実質本位。

生活態度については、個人でそれぞれの考えはあるでしょうが、仮に何かちょっとした問題が発生しても、それが決定的・致命的な事でさえなければ、それこそ実質本位に処理してしまいます。ある意味、なし崩しで適当に処理してしまうことも案外多いのです。意地悪く見れば、誰も実質被害がないなら、そんなことなどいい加減に片付けてしまう。結構、雑な感じもしないではないですが、形式張らずに融通がきくところがあり、私個人としてはこのオランダ人の生き方、案外気に入っていました。

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