追憶のオランダ(16)ロッテフィルの想い出
私はもともとクラシック音楽にはあまり興味がなく、したがって持っているレコード・CD類もほとんどがフォークかロック、またはカントリーが殆ど。もちろん、有名なクラシックの曲のいくつかは教養程度には知ってはいますが、それ以上に広がりはありませんでした。
しかし、あるきっかけで当時のロッテルダム・フィルハーモニー(以下ロッテフィル)のメンバーである二人の方と知り合いになりました。一人はコントラバス奏者、もう一人はバイオリン奏者です。お二人とも親切に、素人が分かりそうな曲目が演奏される時には声をかけて頂けるようになりました。しかも、ロッテフィルのメンバーは皆それぞれ一般よりも格安の特別のチケットを持っておられ、それを分けて頂いていました。ヨーロッパで初めてコンサートに行くとなると、服装を正してというのが一般的だと思って、それも面倒だなと尻込みしていたのですが、「いや、普段着で気楽にどうぞ。」と。もちろん、キチンと正装しておられる方もたくさんいましたが、かたやジーンズにジャンパー・T-シャツという人もたくさんいて、これなら肩が凝らなくていいと、声がかかるたびに出かけたものでした。まさに、俄クラシックファンになりました。
重たく感じられる曲や、愉快な曲など実に様々、誰の作曲かとか曲名が何かなど全く気にせず覚えもせず、その時の全体の雰囲気を楽しみました。ロッテフィルの根拠地はロッテルダム・セントラムにある de Doelen(最近の写真:wikipediaより)というホールで、アムステルダムのコンセルトヘボウに次ぐ立派な近代的なコンサートホールです。
当時は指揮者についても全く知識がなく聞いていましたが、カーリーヘアの英国人サイモン・ラトル、昔の俳優藤岡重慶に似たグルジア人のゲルゲーエフ。この二人はよく見たせいで名前と顔は覚えていました。日本に帰ってからやはりあの時は売り出し中の有望な指揮者だったんだと改めて思いました。
私にクラシックの楽しみ方を教えて下さったお二人の奏者ですが、お二人とも私の帰国を前後して不幸にも病でお亡くなりになりました。もうそれから20年近く経ってしまいました。心からご冥福をお祈りします。