追憶のオランダ(42)オリボーレン

「オリボーレン(Olibollen)」と言われても、何のことか皆さんお分かりにならないと思います。これは年末になると食べるオランダのお菓子の名前です。勘のいい方なら、この名前からOil Ballという英語を想像され、もしかしたら油で揚げた丸いお菓子かなと推測されたかもしれません。そうです、それが正解なのです。穴の開いていない、丸いドーナツのような揚げ菓子でまわりに砂糖をふりかけてあります。ちょっと見には、沖縄の名物サーターアンダーギーとよく似た(サーターアンダギーをもっと丸くしたような)お菓子なのです。オリボーレンのレシピは各店で微妙に違っているのでしょうが、基本は小麦粉がベースで、あとはイースト・牛乳。揚げた後、砂糖を振りかける。レシピもサーターアンダーギー(砂糖・油・揚げ)と非常によく似ています。これはプレーンで、他のバリエーションとしてはドライフルーツを細かく刻んだものを混ぜ込んで揚げたものもあります。

オランダでは年末になると一斉にあちこちにオリボーレンを売る屋台がでます。一個は小さなお菓子なので何個も袋にいれて買って帰ります。しかし、それは年末の時期だけで、年中売っているわけではありません。言わば年末の風物詩とでもいえるものです。街角がオリボーレンを揚げる油の匂いが漂い、年末になったなあと思います。これは、もともとは大晦日に食べるお菓子だったようです。

このオリボーレン、一説には、これこそがアメリカのドーナッツの原型だと言われています。ピルグリムファーザーたちが新天地を求めてイギリスを出てアメリカに渡るまで、彼らはオランダで何年かを過し、その後にロッテルダム港からアメリカを目指して渡っていきました。その後ヨーロッパからの多くの移民たちも同じコースで新大陸を目指しました。その彼らが、さらには彼らの子孫たちがオランダで食べただろうオリボーレンをヒントに穴の開いたドーナッツを作り出したのだと。あるいは、オランダからの移民が作った町ニューアムステルダム(そのあとニューヨークと呼ばれますが)に住む彼らが故郷を懐かしみ作ったものかなとも思ったのですが、もしそうなら穴あきのドーナッツではなく、やはり丸いボール状のものをそのまま踏襲したはずですから、やはり穴あきドーナッツはイギリス系あるいはオランダ以外の移民の子孫の発想かもしれませんね。

今日は大晦日。オリボーレンを食べると、明日からは新しい年が始まります。

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