追憶のオランダ(46)カフェバーの鐘

日本流の飲みにケーションではないが、会社の近くのカフェバーに入ってビールを何杯かひっかけながら、オランダ人の仕事仲間と愚にもつかぬ話に花を咲かせることが時々あった。そんな時、仕事の話は殆どしない。普通は仕事が終わるとそそくさと帰宅する連中がほとんどだが、たまにお互いに一杯やろうと近くのカフェバーに入る。

筆者は最初のうちは店の中にある調度品とか壁に飾ってある写真・絵とか様々なものを物珍しそうにしげしげと見ていて、ふと頭の上、カウンターの上からチャペルなどで見るような形の小ぶりの釣り鐘がつるしてあり、紐が下がっているのに目が留まった。どんな音色がするだろうという興味で、何気なく触ろうとした時、一緒に飲んでいた彼が大声で「やめろ。触るな。」と叫ぶ。こちらの方がビックリして、なぜと尋ねると、彼が説明してくれた。

この種の鐘は昔からのカフェバーには必ずと言っていいほどつるされていて、そこでこの鐘をならすことは、その店で飲んでいる連中皆に一杯酒をおごるよ、という合図なのだと。上の写真は私が鳴らそうとした鐘ではありませんが、画面中央にちょうどカウンターの上にぶら下っています。左の写真でもそうです。その時ざっと3-40人は飲んでいたと思うので皆に一杯ずつおごるとまあまとまった金額になってしまったはずだ。「知らぬとはいえ、危うく怖い鐘を鳴らすところだった、有難う。だから今日は君にすべておごるよ。」といいながらまた話は盛り上がり、何杯も何杯も飲んで、ビール以外にも大好きなジェネーバーも飲み過ぎてかなり酩酊してしまった。実際、いくら払ったのか、どうやって家まで帰ったのかもすっかりもわすれてしまったが、鐘のことだけは、しっかり記憶していた。

そう言えば、その後大分経ってオランダのカラオケのビデオの背景動画で、船乗りが陸に上がり港のカフェバーで飲んでいる場面で、一人がうれしいことがあったようでこの鐘を鳴らしその場の皆に酒をふるまうシーンを見たような気がする。Het kleine café aan de haven「港の小さなカフェ」という題名のオランダの流行歌。

皆さん、オランダでカフェバーに入った時、くれぐれもこの種の鐘だけにはご注意を。でも、鳴らせば、少し高くはつきますがその場の全員と一気に仲良くなれそうで、いいかも・・・。

 

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