追憶のオランダ(57)車社会
私はそんなに車の運転が好きな方ではない。子どもが生まれてから何となく車は持つようになったが、たまに近所を運転するくらいで、遠方と言えばゴルフに出かける時くらいだった。そのゴルフも、だれか便乗させてもらえる人がいたらお願いした。その理由は、ゴルフの後ビールを飲みたいからというだけのこと。また、日本は公共交通機関が結構網羅されているのでたとえ車がなくてもあまり不便さは感じない。特に、ハイムに住むようになってからというもの、駅が近いこともあり、なおさら車を使う頻度は減ったように思う。
オランダに住んでみて、やはり事情が日本とは大きく異なっていた。もちろん、公共交通機関はあるものの、生活そのものが車中心の生活だ。それはオランダだけに限らない。ちょっと、そこまでという買い物にも、車だ。ということで、私も赴任早々やったことと言えば、住む家の物色よりも運転免許の切り替えだった。車は定住する住まいが定まらないと購入は出来ないが、社有車は免許を切り替えさえすればできる。ともかく、車がなくては何も始まらなかった。
どこへ行くにも初めての所ばかり。これは当然のこと。しかし、初めての所へ簡単な住所だけを頼りに行くにも、通りと番地だけが分かっていれば、まずそんなに迷うことはなかった。日本だと住所だけで目指す場所を探すのは簡単ではない。何丁目という一定の広さのところにバラバラと番地が割り振られていて、あまり規則的ではないことが多いので、今のような便利なナビゲーションのシステムがなかった20年前なら、番地まで細かく入った住居地図がなければなかなかむずかしかった。しかも狭い道を地図を座席の横に置いて見比べながら家を探すのは大変だった。
それに比べてオランダだけでなくヨーロッパでは、すべての道に名前が付けられている。たとえ、袋小路のようなものにも一応名前が付けられている。まず、この点が日本とは大きく異なる。そして、その道の両側に、片方の側には奇数、反対側には偶数と順番に番号がふられている。したがって、全くの未知の土地に行ってもその通りさえ見つけられれば、後は番号を順に追って行くだけで簡単に目指す家までたどり着ける。
また、高速道路も無料だし、一般道路との接続がスムーズにできるよう合理的に設計されていて、たとえ出口を間違えてしまった時など、気がつけばすぐにまた乗り直しができるようになっている。日本だと、一旦降りてしまうと料金も別にかかるし、今度乗るためには一般道路を走り、入り口を探さなければならない。これも簡単ではない。やはり、日本は車社会になり切れていない感じがする。
そんなことから、オランダにいる間は車の運転があまり好きではない私も結構平気で出かけたものだ。ただ一つ経験する機会がなかったことは、ドーバー海峡のユーロトンネルをくぐって、左側通行のイギリスに車で乗り入れることだ。トンネルの中で左車線と右車線がねじれるようにして繋がっているのだと頭の中で想像していたが、これは違いだった。後でわかったことだが、列車に車ごと乗りこんで運んでもらうのだそうだ。
ここで、道についてのオランダ語を数えてみた。こんなのがある。カッコ内は英語。
Straat(Street)・Weg ( Way/Road )・ Laan (Avenue) ・Steeg ( Alley) ・Pad ( Path)・Baan(Path)など 。