追憶のオランダ(67)住居設営奮闘記(続)
それまでの約10日以上は、先行して送っていた変圧器に電気スタンドだけで明かりをとっていた。どんな照明器具にするか思案していたところ、よく見ると天井には日本のような照明器具を接続できるような形のものは何もない。なにやら細い電気コードがチョロッと出ているだけ。天井からぶら下げる照明器具を選んでは見たものの、とても自分一人では取り付けられそうにない。そこで、再び電気屋に行き照明器具の取り付けを頼むと、店の親父はキョトンとして、お前は何を言っているんだ、というような顔をする。話が通じなかったかと思い再度言ったら、今度は言葉で半分呆れたようにはっきり言われてしまった「お前は電気器具一つもつけられないのか?」と。その後、道具がない、経験がない等々くどくど説明する羽目になったが、親父もこちらを憐れに思ったか「分かった。明日にでも取り付けにいってやる。」ということになった。いかに文化・習慣がちがうかが分かるいい経験にもなった。それで、やっと明るい夜を迎えることができたが、その時はまだベッド・ソファなど大型の家具は揃ってはいない。借りているギシギシいう簡易ベッドとパイプ椅子の生活がまだしばらく続いた。
この照明器具問題で少し分かったことだが、周りの家庭の様子を窺ってみると明かりの取り方が日本とは大きくちがうことだ。オランダでは昼間はもちろん夜でも家の中が丸見えの家が多く、夜見るとまず天井からの明かりは少なく、フロアスタンドとか壁に取り付けた照明が主流のようだった。いわゆる間接照明なのである。そして、一様に暗い感じがした。特に蛍光灯のあの明かりは殆どの家庭では見なかった。
それから何日か後にベッド・ソファ・食卓・椅子などが搬入され、さらに電化製品も続く。ただ、どの配達日にも一日仕事を休んで家で待っていなければならない。何時に配達されるか分からないので、まる一日が潰されてしまう。
なんと、すべて揃うのに、壁紙剥がし始めから1カ月近くかかってしまっていた。右の写真のちょうど真ん中に見える家であった。
この苦労、遅れて来た家族には分かるまい。
また、この間、表に面した庭が草ぼうぼうだったこともあり、草抜きをした。しかし、一時的に草がなくなった後、よせばいいのに、芝生を貼るろうと思い始めたがこれも結構な重労働だった。その割に思ったほどうまく育ってくれない。そして、後々まで定期的な芝刈りをはじめそのメンテナンスの面倒に自ら巻き込まれることになったのだ。本当に、よせばいいのに、であったが、すべて初めてのことなのでそれはそれでいい経験にはなったが。