追憶のオランダ(71)限界集落
近年、日本では山間部などでは過疎が進み住人の大半が高齢となっているいわゆる限界集落では日常の買い物にも困るという。それで、食料品やらいろいろな日用品などを積み込んだ移動販売車が定期的に巡回している話をよくテレビなどでも見ることがある。
実は、それと似たことをオランダで既に経験していたのだ。住んでいたところが別に限界集落でもなんでもなく、生活には何ら問題がない都会の中ではあるが、異国ということもあり、日本食材に限って言えば当然のこと途端に手に入りにくくなる。別に贅沢をするわけではないが、日本食材が欲しいと思ってもロッテルダムではなかなか入手はむずかしく、アムステルダムまで行くかドイツのデュッセルドルフまで買い出しに行かねばならない。いわば、限界集落で見られるような日本食材の調達難が起きていたわけだ。
ある時から、アムステルダムのホテルオークラの地下にあるYAMAという食料品店が、ロッテルダムを始めオランダの主だった町の日本人コミュニティーがあるあたりまでワゴン車で移動販売をしてくれるようになった。まったく日本の山間部の限界集落に移動車が来るのと同じなのだ。決まった曜日の決まった時間に皆待ち構えている。それもあって、それまでは毎月アムステルダムまで買い出しに行っていた頻度が確かに少し減った。
限界集落のお年寄りが、移動販売車が来るとあちこちから集まってきて、楽しそうに買い物をしているのをテレビで見て、まさに20年前の自分たちもこんな様子だったなあと感慨深いものがある。これから先、もしも足腰立たなくなったら、今住んでいるところは限界集落ではないものの、またこれに似た状況にならないとも限らないと思ったりもする。