コッツウォルズの歩き方⑩旅先でのトラブル

個人旅行には、お仕着せのパック旅行とは違ってオリジナリテイと自由がある。なにごともなくスムースに事が運べばこんな楽しい旅はないだろう。しかし、自由があるということはリスクもあることを忘れてはいけない。 「こんな筈じゃなかった」と後で泣かないために、きちんとした心構えが必要である。

個人旅行とパック旅行との大きな違いは、「個人旅行には旅程保証や特別補償がない」ことである。個人旅行(手配旅行)の場合、旅行会社は事故や旅程の変更などには一切責任を負わないし、補償金や見舞金を支払う義務も無い。航空機の欠航などで当初予定していた通りに旅行が進まない場合は、代替機の交渉から宿の確保まですべて自分でやらなければならない。補償どころか最悪の場合は、自腹を切らざるを得ないケースもあるということである。

例えば、直行便ではなく目的地まで乗り換えの必要な場合で、天候その他の理由で最初の便の到着が遅れた為に、経由地で乗り継ぎ便に間に合わないケース。こんな場合、航空会社と代替機の交渉をしなければならない。一度予定が狂うと次々としわ寄せで狂って行き、目的地のホテルに着いたら夜中の3時或いは翌朝だったということもある。もっと悪いケースだと、代替便がうまく取れず結局空港で夜を明かすことになったというケースだってある。(事実、筆者もバンコックでコペンハーゲン行きの乗り継ぎでトラブルがあり空港で一夜を明かした経験がある)

こういうトラブルに見舞われた時、自分で対処するために最低限の語学力はあったほうがよい。語学力は流暢であるにこしたことはないが、私は、中途半端な語学力よりもむしろ「度胸」のほうが必要であろうと思う。カタコト英語でも人間、必死で事に当たれば何とかなるものである。

旅にトラブルはつきものであり、個人旅行であろうとパック旅行であろうと起こる時は起こるものであるという割り切りが必要だろう。「トラブルを楽しめ」とまでは言わないが、「いい土産話が出来た」と笑い飛ばすくらいの明るさと余裕が欲しいものだ。

個人旅行のメリットといえば、団体行動の制約を受けない自由気ままさと同時に、「旅行代金が安上がり」というイメージがあるが、そうとも言い切れない。滞在日数と泊まるホテルのランク次第で個人旅行の方が割高になる場合がある。航空券は、団体料金を個人に切り売りするようになってからは、個人でも安く手に入るようになった。

しかし、団体だから料金が安くなるホテルはいくらでもある。やはり年間相当数の観光客を扱う旅行会社の力は無視できない。「航空券とホテルを別々にパーツで購入した方が安上がりだ」という人がいるが必ずしもそうではないので誤解なきよう。

計画を立てる時には、もろもろの経費も事前に調べておくべきだ。交通費や食事代、施設の入場料などはグループ割引のない分、個人は割高になる。ただ、安くてもまずい食事は興ざめだし、見たくもないところへ行くのは貴重な時間を無駄使いすることになる。

要は、ケースバイケースで、自分がこの旅で何をしたいのか、どんな時を過ごしたいのかを(時間をお金で買うことも含めて)じっくり考えてみることである。そして、内容を自分なりにアレンジし、料金がどのように変化して行くかを見る。

パックより安く出来た部分があれば、その分を他の部分に当てて内容を充実させるのもよい。あるいは、浮かした分はそのままお土産代にする手もある。「結果的にあまり違いがなければパック旅行にすればいい」と思っておけば、気楽に楽しく計画できる。内容か料金か、どちらを選択するのもあなたの自由。

如何ですか? 個人旅行の計画は結構手間がかかりますが、計画する時から旅の楽しみは始まっています。 その手間をいとわない人は自由とオリジナリテイを手に入れられるでしょう。そんな手間ひまが面倒な人は、パック旅行で十分楽しめるでしょう。

さて、この旅行記は、自由旅行を初めて創った時の様子を企画段階から記したものとお伝えしましたが、出発前の準備については今回で終わり、次回からいよいよ”旅行記”そのものが始まります。

~つづく~

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