詩~黄色の鯉

黄色の鯉

欲しかった

過去形にして
黄色の鯉が
二匹
三秒前から
この瞬間へ
カーブの軌跡
近づいて
反り返り
この瞬間
はっきりする

欲しかった

あれは
どうして
それは
このようです
葉書を
一枚
ふわりと飛ばして
黄色の鯉
二匹を
確かめて

そうでしたか

わけもなく
明るんで来る
嵐の後の
砂を撒いたような空
生まれたばかりの
水色の滲みに
鯉を放って
この夕空を
いま
着こなしてやる

荻悦子詩集「流体」より

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