荻悦子詩集「樫の火」より~「冬の星」
冬の星
流星が見えない夜が明けると 高名なヴァイオリン奏者は 耳で身体でそれに触れさせる 演奏会が終わると それから幾日か過ぎ ひとつひとつの音がくっきりと立ち 私は車輪梅の枝を手にしていた 窓に近寄って空を見上げた |
荻悦子(おぎ・えつこ) 1948年、新宮市熊野川町生まれ。東京女子大学文理学部史学科卒業。お茶の水女子大学大学院人文科学研究科修士課程修了。作品集に『時の娘』(七月堂/1983年)、『前夜祭』(林道舎/1986年)、『迷彩』(花神社/1990年)、『流体』(思潮社/1997年)、『影と水音』(思潮社/2012年)、横浜詩人会賞選考委員(2012年、16年)、現在、日本現代詩人会、日本詩人クラブ、横浜詩人会会員。三田文学会会員。神奈川県在住。 |